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羊文学“Burning”レビュー|自分の気持ちに真正面から向き合う

人は誰しも「他人にこう思われたい/自分をこう見せたい」という思いを抱き、“自分を演じている”。あるいは、他人からのイメージによって“自分が作り上げられる”、そんなこともあるだろう。
しかし、その外向きの姿が必ずしも自分の奥底にある気持ちと一致しているとは限らない。

そんな複雑な人間の心情を描いた曲が、羊文学の“Burning”だ。

羊文学“Burning”レビュー

アニメ『【推しの子】』第2期のエンディングテーマに起用されている本作。アニメの登場人物たちは、キラキラと輝く芸能界で活躍しながらも、心のうちでは復讐心や表に出せない負の感情を抱いている。

そんな登場人物たちの気持ちを反映するかのように、曲は歪んだギター、暗いトーンの歌声で始まる。グランジ調のAメロから、Bメロ、サビに向かうごとに徐々に曲調は明るくなり、サビでは突き抜けるようなハイトーンボイスで心の声がさらけ出される。

人の葛藤や感情の変化がサウンドでドラマチックに表現されているのだが、特に面白いのは2番のAメロ。
〈またここで立ち止まった どこへ行けばいいの?〉1という迷いを表現するように、ギターの音が左右を行き来しているかのような波のある音作りになっている。
オーバーグラウンドで躍進する、今の羊文学だからこそ描けるリアルな感情が歌詞やサウンドに落とし込まれている。それをストリングスなどを取り入れて大仰に表現するのではなく、あくまで自分らが手にする楽器と最低限のエフェクトで作り上げるところに羊文学のロックが表れている。

曲の最後は〈(この気持ちは誰にも言えない)〉1という言葉で締めくくられる。結局、自分を救えるのは自分だけということなのだろう。

自分の本当の気持ちに向き合いたい。そう感じた時に聴きたい一曲だ。

1 羊文学“Burning”(作詞:塩塚モエカ)より歌詞を引用。

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