Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」レビュー|“愛してくれる人”を求めること

「周りから必要とされたい」
学生の頃、よくそんなふうに思っていた。

Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」レビュー

Mrs. GREEN APPLEの「ダーリン」を聴いた時、ふと当時の気持ちを思い出した。

たとえば、誰よりも優れた何かを持っていれば、みんなが自分を頼ってくれるかもしれない。
たとえば、流行に敏感で話が合う人だったら、みんなが面白がって自分のもとに来てくれるかもしれない。
“周りから愛される自分”を研究して、想像して、自分の居場所を作ろうと必死になっていたのだ。

だが、そうやって頑張れば頑張るほど、本来の自分とはかけ離れていくような気がした。
かといって、素の自分を受け止めてくれる人も、いないように感じていた。
なぜだかいつも自分が置いてきぼりのようで、周りから慕われる人を羨ましく思っていた。

〈負けない何かが欲しい/“私”だけの愛が欲しい/そうすればきっと僕らは/比べないで居れる〉1

「ダーリン」の冒頭の歌詞は、ちょうど当時の自分が抱いていた想いと重なった。

「ダーリン」は、18歳世代の1000人とアーティストが1度限りのパフォーマンスで共演する『Mrs. GREEN APPLE 18祭』(NHK総合)のテーマソングである。
18歳世代は大人と子どもの狭間。今まさに過去の自分と同じような気持ちを抱えながら、誰にも言えずに苦しんでいる人も、おそらくいるのではないかと思う。

“最愛の人”という意味がある“darling”。
ストリングスが絡み合うバンドサウンドに乗せられるのは、自分を愛してくれる人を求めるような言葉たちと、大森元貴(Vo/Gt)の切実な歌声。
孤独や寂しさを抱えた人たちの気持ちを代弁した歌詞は、バラードという曲調も相まって、1つひとつが丁寧に届けられていく。

そして最後に、〈あの子にはなれないし/なる必要も無いから〉2と優しく諭してくれるのだ。

私自身、大人になった今はもう、“周りから愛される自分”を無理に作ろうとは思っていない。
大人になるとコミュニティも広がって、付き合い方もある程度選べるようになる。
仕事だったり、習い事だったり、趣味だったり……自分と考え方や価値観が似ている人と出会いやすくなり、素の自分を出せるようになったのが大きいかもしれない。

それでも、「周りから必要とされたい」と考えてしまうことは、今でもたまにある。
そんな時には大抵、意味は無いと分かっていても、周囲から慕われる人と自分を比べてしまう。

たとえば「ケセラセラ」や「ライラック」がそうであったように、Mrs. GREEN APPLEは“自分自身を愛すること”を歌い続けてきたバンドで、「ダーリン」も例外ではない。
先述したように、この曲で行き着くのは“自分のままでいい”というメッセージだ。

ふとした時に襲ってくる孤独や寂しさと闘う中で、その言葉に救われる人も多いだろう。
そうやって「ダーリン」をお守りのようにして生きていくのは、18歳世代とは限らないのだと思う。

少なくとも、大人である私がそうなのだから。

1,2 Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」(作詞:大森元貴)より歌詞を引用。

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