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indigo la End『カンナ』楽曲レビュー【7thアルバム「哀愁演劇」先行配信曲】

indigo la Endの7thアルバム「哀愁演劇」が、2023年10月25日(水)にリリースされた。

またアルバム「哀愁演劇」のリリース同日には、全編台湾で撮影された『カンナ』のミュージックビデオも公開し、リスナーそれぞれが考察を楽しんでいることだろう。

そんな中アルバムのリードトラックである『カンナ』(作詞:川谷絵音)は、一足先の10月18日(水)に先行配信された。

>>『カンナ』配信サイト一覧 ※クリックするとサイトが開きます

『カンナ』は10月7日(土)に行われた「ナツヨノマジック vol.3」で披露され、また公式Xを中心にMVが一部公開され、日本の風景とはまた異なる世界観にSNS上で話題になっていた楽曲だ。

本記事ではそんな『カンナ』を筆者の解釈も含めレビューしていく。是非自身の考察と照らし合わせ、「哀愁演劇」をもっと楽しむ一つの材料にしてくれれば幸いだ。

indigo la End『カンナ』レビュー

全編台湾で撮影された本ミュージックビデオ(以下、MV)は、今風ながらもレトロな色味が特徴的だ

曲名の『カンナ』、これは【女性の名前】と【花の名前】の二重の名前を意味していると考える。

indigo la Endの楽曲全ての作詞作曲を担当する川谷絵音(以下、川谷)は、『さよならベル』『ハルの言う通り』を筆頭に、普通名詞を使用しつつも女性の名前を連想させる曲名を多く世に輩出しており、同じく作詞作曲を行っている「ゲスの極み乙女」も『ハツミ』『ルミリー』等同様の特徴がみられる。

また、本楽曲が収録されている「哀愁演劇」でも『ヴァイオレット』『プルシュカ』は「花の名前」が曲名になっており、本作も一種のシリーズとみて間違いないだろう。

実際に人名でも使用されている『カンナ』だが、なぜ本曲をカンナと名付けたのだろうか?

まずここで一度カンナの花言葉を見ていこうと思う。

カンナ』の花言葉▼

一般的にカンナの花言葉は「情熱・快活・妄想」※なのだが、花の色によって別の花言葉が存在する。

赤いカンナの花言葉▽ 

「堅実な末路・堅実な最期」

→MVで赤いカンナの描写があることから、本楽曲ではこちらの花言葉の意味合いが強いのではないだろうか?

黄色いカンナの花言葉▽

「長続き・永遠」

※参考:Green Snap STORE公式サイト

indigo la Endの楽曲では片想いや別れといった切ないテーマが多いことや、既に公開されている『カンナ』のMVの描写から、本楽曲のイメージには「妄想」「堅実な末路・堅実な最期」の花言葉が用いられていることが予想できる。

歌詞に見られる「哀愁のある演劇感」

歌い出しの<朝に吠える犬 隣で寝てる美人>、これは幸せな朝の一幕で、隣で寝ている愛する女性と鳴いている飼い犬を描写したものだろう。余談だが、筆者は小坂明子の『あなた』の歌詞を想起し※、愛する人との「幸せな時間」の描写は年代に関わらずある一種の共通認識があると感じた。

※1973年に発売された小坂明子のデビューシングル。筆者が想起したのは<子犬のよこにはあなた あなた あなたがいてほしい>の部分。(作詞:小坂明子)

また、歌詞を吟味すると1番目と2番目では大きく状況が変化しているのが分かる。1番目では愛する女性との甘やかしい日々を、2番目では愛する女性がいなくなった現実を歌っている。そして終盤の落ちサビでは、<朝に鳴ったアラーム 予感めいたものはなかった>と。

これは演劇やドラマで話の展開としてよく用いられる「夢オチ」に似たものを感じてしまうが、1番目のBメロで<未来の話 進めよう>とあるため、夢描いた未来とは大きく異なる【現実の未来】の落差をより顕著にするため、川谷はあえてこのような構成にしたのではないだろうか。

本作は、哀愁【演劇】というアルバムのリード曲(トラック的にも1曲目に収録)ということもあり、歌詞の要所要所に演劇や映画を意識した単語が散りばめられている。そのため、芝居物に興味がある方も『カンナ』をじっくりと味わってみてほしい。きっと筆者とは別視点の「哀愁」を感じる事ができるはずだ。

>>『カンナ』歌詞はこちら

リズム隊の演奏と川谷の無機質な歌唱

本曲を初めて耳にしたとき、筆者が感じたことは「これは本当に川谷絵音が歌唱しているのか……?」ということだった。思わず誤って他のアーティストの楽曲を再生していないか確認したほどである。川谷は感情的で抑揚のある歌唱をするボーカリストではない認識だったが、本楽曲ではより無機質な印象を受け、まるで芝居の「ナレーション」役を川谷が担っているように感じた。

リズム隊の演奏も本作では比較的控えめで、川谷のボーカルをグッと引き立たせているのも特徴だろう。

また、長田カーティスのメロウ調なギターで過去と未来と願望が混じり合う様子を演出しており、より哀愁を掻き立てるメロディラインとなっている。

カンナをミュージックビデオで紐解く

本楽曲のMVは、indigo la EndのMVやステージムービーを数多く手掛ける大久保拓朗が監督を担当し、バンド自身初となる全編海外でMVの撮影が行われた。

ロケ地は台湾となっており、MVの出演者も王渝萱(読み:ワン・ユーシュエン)という台湾の女優を起用し、今までのindigoのMVとは一線を画す、まるで夢の中にいるような幻想的な雰囲気となっている。全体を通して霞がかったような映像は平成初期の映像の質感を彷彿とさせ、また全体的に暖色が印象的なアクセントとなっており、劇中には曲名でもある「カンナ」の花も登場している。

またなんといっても最大の特徴は、2番目のサビ以降(Cメロ)から歌詞の文字が反転していることだ。

これはどんな意味を表しているのだろう?

筆者は最後に流れる音声と密に絡められていて(これは是非、MVで確認してほしい)、鏡越しに文字を見ると反転してしまうことを利用し、「女性がいる世界=こちらが現実だと信じたい気持ちを含めて文字の向きが正常」「女性がいない実際の世界=こちらが現実ではなく、こちらの世界が虚像だと信じたい様子から文字が反映」しているのだと考察した。 

indigo la End「哀愁演劇」について

『カンナ』が収録されている「哀愁演劇」は全15曲収録で、indigo la Endの2年半振り7枚目のアルバムである。アルバムの初回限定盤A・Bには、昨年行われたバンド初となる武道館公演「藍」の模様が全編収録されたBlu-ray・DVDもセットになっている。

また「哀愁演劇」リリースにあたり、自身初のフリーライブの開催や下北沢でのポップアップ・イベントの開催も決定と、既存のファンだけでなく、「indigo la End」が気になっていたリスナーも、この機会にハードル低く気軽に参加できるイベントが目白押しだ。

自身最大規模のツアーも控えているindigo la End。ここから彼らは、我々リスナーにどんな哀愁を魅せてくれるのだろうか。「哀愁演劇」の発売を目前に控えた、今から期待が止まらない。

indigo la End・各種リンク◯ ※クリックするとリンク先が開きます。

バンドメンバー・X

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