sumikaの便箋の画像

sumika『FLYDAY CIRCUS』ライブレポート

思えば、sumikaは最初から不完全さを武器にしてきた。

メンバーにベースがいないから、自分たちだけでは成り立たない。だからこそ、ライブでは毎回ゲストミュージシャンを呼んで化学反応を楽しむ。編成にはこだわらずに楽曲を制作する。
そうやって、足りない部分を強みに変えながら前に進んできたバンドだった。

『sumika Live Tour 2024「FLYDAY CIRCUS」』ライブレポート

2月から4月にかけて開催された『sumika Live Tour 2024「FLYDAY CIRCUS」』。このツアーもまた、sumikaのそうした力強さ、柔軟性を感じられるものだった。

たとえば、片岡健太(Vo/Gt)と小川貴之(Key/Cho)によるツインボーカルで届けられた「ふっかつのじゅもん」や、荒井智之(Dr/Cho)がサックスで加わった「Babel」。
昨年、片岡の不在時に、sumikaは小川と荒井による“sumika[roof session]”で活動してきた。小川のメインボーカルも、荒井のサックス演奏も、当時のライブで行われたものである。
たとえメンバーが欠けたとしても、バンドがこれ以上歩みを止めないように、試行錯誤して届けられた“sumika[roof session]”。彼らはそこで培ったものを、今度は“sumika”という母体に落とし込んだのだ。

「ここからはもっと新しいsumikaを見せていきたい」──MCで荒井が語ったように、中盤からは特別編成でのステージが繰り広げられた。

まずは片岡と荒井に、ベースとトランペットが加わって届けられたジャズアレンジの「New World」。途中のソロ回しで片岡がハーモニカを吹いたり、ドラムセットの電飾がカラフルに光ったりと、1曲の中でもさまざまな演出で楽しませてくれた。

入れ替わる形で登場した小川は、ギター、コーラス、キーボードの編成で「Simple」を披露。小川のボーカルに重なるコーラスが美しく、原曲とは違うゆったりとしたテンポのアレンジだからこそ、歌詞の一言一句が心に染み渡る。
バンド、そして楽曲の新しい表情が見られたセクションだった。

今回のライブのテーマを“サーカス”にした理由は2020年に遡るという。
2020年9月、コロナ禍で予定していたツアーが中止となり、代わりに行われたのが無観客配信ライブ『sumika Online Live「Little Crown 2020」』だった。戦後、焼け野原にサーカステントを立てて、エンターテインメントを取り戻そうとした人達がいたこと──その話に今の自分たちとリンクする部分を感じことから、ライブはサーカス会場から届けられた。公演は無事に成功したが、この状況が落ち着いたら「有観客でもう一度サーカスをやろう」と決めていたのだという。

ライブ後半、サーカステントを思わせるステージセットで、「Glitter」「Flower」といったアッパーチューンを投下していく様子は、にぎやかなサーカスの雰囲気そのものだった。

極めつけは「マイリッチサマーブルース」。歌の途中で、小川が突然「やりたい曲がある!」と楽曲を切り替え、自身のメインボーカルで「イナヅマ」を届ける。「いやいや、歌わなくていいよ!1曲終わったら次にやればいいじゃん!」と、今度は自身が先導して演奏を「マイリッチサマーブルース」に戻す片岡。そんなやり取りが何度か繰り返され、2曲が少しずつ交互に演奏されていく様子に、会場は笑いと熱気に包まれた。

さらに、アンコールでは新曲の「運命」を披露し、MVを再現してステージ上から便箋が降ってくる演出も(観客全員に行き渡るように便箋は会場出口でも配布された)。本当に、sumikaのライブは最後まで何が起こるか分からない。

筆者が見たのは4月20日のセミファイナル公演だったが、この日、片岡は何度も「明日ファイナルができるとは限らない」と口にしていた。想像通りの未来が常に来るわけではないことを、おそらく彼らは痛いほど知っている。だからこそ、sumikaはいつも目の前の“今”に真剣に向き合い、一瞬一瞬を全力で楽しませてくれるのだ。

これからもsumikaは、困難を乗り越える中で手に入れた武器を活かしながら、私たちを想像以上に楽しませてくれるだろう。
焼け野原から立ち上がったサーカスはどこまでも明るく、バンドの逞しさを感じるものだった。

■2024.4.20『sumika Live Tour 2024「FLYDAY CIRCUS」』セットリスト@ 神奈川・ぴあアリーナMM

1. Starting Over
2. Lovers
3. チェスターコパーポット
4. The Flag Song
5. ふっかつのじゅもん
6. MAGIC
7. グライダースライダー
8. Babel
9. New World
10. Simple
11. ゴーストライター
12. 言葉と心
13. Glitter
14. Flower
15. マイリッチサマーブルース / イナヅマ
16. カルチャーショッカー
17. 一閃
18. 「伝言歌」
19. シュガーソルト
En1. 運命
En2. 1.2.3..4.5.6
En3. Phoenix

【関連記事】

関連記事一覧