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コード・オレンジ『The Above』レビュー|新たなステージに到達した傑作

コード・オレンジの最新アルバム『The Above』を約半年遅れで聴いている。なぜこんなにいいアルバムをすぐに聴かなかったのか、自分を責めたい気分だ。
『The Above』はこれまでのコード・オレンジらしさを残しつつ新たなステージに到達した、そんな作品になっている。

コード・オレンジ『The Above』レビュー

本作は2023年9月に発売されたコード・オレンジの5枚目のアルバム。
コード・オレンジはペンシルヴァニア州ピッツバーグで結成されたハードコア/メタルコアバンドで、メンバー加入やパートチェンジを繰り返し、現在は6人体制で活動している。2018年と2021年にはグラミー賞にもノミネートされ、実力も人気もあるバンドだ。

以前からコード・オレンジが好きだった私は、新譜が出れば必ずチェックしていたが、今回は公開されたミュージックビデオを観て聴く気が起きなかった。
コード・オレンジのミュージックビデオと言えば、バイオレンス!血!絶叫!といった要素が多く、楽曲とあった世界観が魅力の一つだった。
▼2016年に公開されたミュージックビデオ“Forever”

だが、今作の『The Above』から公開されたミュージックビデオは、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンをゲストに迎えた“Take Shape”と、メロウな音楽性を全面に出した“Mirror”。どちらも不気味さは残りつつも、画面の色合いはポップで明るく、私が持っていたこれまでのコード・オレンジのイメージとは異なるものだった。

「曲を聴いてもいまひとつ滾らないし、完全にセルアウトしてしまった…」と思い、アルバムまで手が伸びなかった。
ふと、今月に入って何の気なしに聴いてみたところ、その完成度に驚いた。
年々メロディがしっかりあって聴きやすい曲が増えているのは事実だが、今作はそれがとてもいい方向に作用していると感じる。

前作『Underneath』は電子音のノイズを多分に曲の中に取り入れ、とても力強い作品であったが、その迫力ゆえに聴いていると疲れを感じる作品だった。
それが『The Above』では、前作の音楽性を踏襲しつつ、初期の無骨なハードコアらしさも感じられるバランスのいい作品になっている。アルバムを聴き終わった後も疲労感はなく、美しいメロディラインが多いこともあり、何度もリピートしたくなる。
タイトル通り、前作より一つ上のステージに進んでいると感じられる。

シャウトがない曲も多いが、しっとりとしたM5“Mirror”の後にはバイオレンスな曲調のM6“A Drone Opting Out Of The Hive”を置き、緩急のある展開やサビのシャウトの掛け合いから初期のコード・オレンジらしさを感じさせてくれる。しっかりとこれまでの系譜を踏まえた上での進化だということを見せてくれる。
ちなみに私のお気に入りはM11の“Snapshot”。疾走感のある曲でノリやすく、聴いていてテンションが上がる。リーバ・メイヤーズ(Gt./Vo.)の泣きのクリーンボーカルもいい。

これまでの音楽性を引き継いだ上でポップさや聴きやすさが加わっているため、コード・オレンジらしさも感じられるし、新たな一面を見せてくれるというとても満足感のあるアルバムだ。
バンドが2年前に来日した時はライブを観に行くことができなかったので、今度はフェスだけの出演とは言わず、このアルバムを引っ提げて日本ツアーなんかもしてほしいなと思う。

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