Crystal Lake「Rebirth」

Crystal Lake『Denial // Rebirth』レビュー|生まれ変わるバンドの姿

「こう来たか!」
全く予想のつかなかったアプローチに思わずそう口に出していた。
6月23日に発売されたCrystal LakeのNew Single『Denial // Rebirth』は、彼らのキャリアの中で新たな扉を開いたと確信する仕上がりだった。

Crystal Lake『Denial // Rebirth』レビュー

今作は新ボーカルのJohnが加入して初のリリースとなる。
6月16日に”Denial”のMVが公開され、23日にデジタルリリースと”Rebirth”のMVが公開されたわけだが、この戦略にまんまと私は”騙された”。

最初に公開された”Denial”のMVはJohnの獣のような低い咆哮、Gakuの人間離れした高速ツーバスと、ブルータルでノイジーな様子でデスコア路線へと舵を切ったのかと思った。
もとよりJohnのイカついビジュアルやそこから発せられるグロウルを活かすとなると、いい意味で今より洋楽っぽくなるのだろう、そう思っていた。

ところが”Rebirth”が公開されて驚いた。まず、「歌詞に日本語がある!!」と。
これまでのCrystal Lakeの楽曲でコーラスやセリフを除いて日本語詞はなかったと私は記憶している。
さらに曲中には日本の伝統的な音楽を連想させる鈴の音や民謡のようなメロディが散りばめられていてまるで民族音楽だ。

アメリカ人ボーカリストを起用した最初の曲であえて日本色を濃く出す。きっと誰もが予想してなかったことだと思う。そもそもJohnは日本的な要素を取り入れることに好意的だったこともあり、今回のような仕上がりに踏み切ったのだろう。(参考:「Crystal Lake “THE LIGHT” Season 2 INTERVIEW!!」SATANIC ENT.

加えて、リリース日に公開されたMVだ。
所々で映るメンバーは儀式めいた衣装を身に着け、祈りを捧げるようなシーンがいくつも差し込まれる。
そしてその祈りが届いたのか、終盤にはもののけ姫の「ダイダラボッチ」を思わせる、妖怪のような神のような「何か」が登場する。
ダイダラボッチには山や湖を作ったという伝承があり、言わばその土地を全く違うものに再生=生まれ変わらせてしまう。タイトルの”Rebirth”を象徴するものなのだろうか。なんとも不気味で神秘的である。

曲もMVも面白い世界観だ。何よりこれまでのCrystal Lakeになかった表現に驚いた。

…が、正直「やりすぎ」と思ってしまったのは否めない。あまりにも「ザ・日本のイメージ」すぎないか…と。
鬼滅の刃のアニメで挿入歌として流れてても何ら違和感がないぐらい、コテコテの日本イメージの再現に胃もたれ気味である。海外ウケは良さそうだし、もしかしたらそれを狙ったのかもしれない。
Crystal Lakeの叙情的なメロディやギターが好きな私からすると、振り切ったなぁというのが正直な感想だ。

だがそれも、Johnがボーカルだからこそできたことだと思う。全員が日本人のバンドだったらここまでの振り切り方はできなかっただろうし、やろうとも思わなかったのではないだろうか。そして再生を意味する曲だからこそ、この呪術的な雰囲気が成立する。そういった意味でも、Johnの加入はCrystal Lakeを新たなステージへと引き上げたと言える。

今年に入ってから、Johnがボーカルを務めたライブを2回観た。2月のオーディションライブの時と、正式加入後の5月のライブでだ。たった3か月の間だが、Johnが著しく成長していたことに驚いた。
とすれば、これからJohnがフロントマンとして馴染み、バンドとしてのグルーヴが高まるほどCrystal Lakeは予想のつかない方向に化けるのだろう。
結成から20年を経て、新たな姿に生まれ変わろうとしているCrystal Lakeに期待したい。

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