KITAKAZE ROCK FES.

NOISEMAKER「KITAKAZE ROCK FES.2023」ライブレポート|4人が最も輝く場所で奏でる音

このNOISEMAKERこそ一人でも多くの人に観てもらいたい。NOISEMAKERが最も輝くライブはこのKITAKAZE ROCK FES.だ。澄んだ冷たい空気の中にある確かな熱を感じて、そう思った。

NOISEMAKER「KITAKAZE ROCK FES.2023」ライブレポート

北海道札幌市にある”札幌芸術の森”にて、「KITAKAZE ROCK FES. 2023」が開催された。
KITAKAZE ROCK FES.とは、オルタナティブロックバンド・NOISEMAKERが主催する音楽フェスで、自らの出身の地である北海道のロックシーンを盛り上げるため、また、北海道がロックの中心地になることを願って年に一回行われている。
2018年からサーキットイベントとして札幌のライブハウスで行われていた本イベントは、2020年に初めて野外フェス形式での開催を試みた。しかし、新型コロナウイルスが流行した影響で2020年、2021年と立て続けに中止に追い込まれた。2022年にようやく開催が叶い、今年は2度目の野外での開催となる。

私が参加したのは、Day1となる5月20日(土)だ。
この日のラインナップは、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、我儘ラキア、Paledusk、Crystal Lake、coldrainと、都内のイベントであればソールドアウト必須のメンツである。ところが会場内を見渡せばスペースにはまだ余裕がありそうな状況で、北海道の地でロックバンドが集客を行うことの厳しさを感じた。
だからこそNOISEMAKERがこのフェスを開催することに意味があるというもので、これから動員を増やして北海道のロックシーンを盛り上げていく様子を見られることは、とても楽しみなことでもある。

KITAKAZE ROCK FES.

イーグルのアート
入り口前にはメンバーが手掛けたアートも。

主役のNOISEMAKERのライブは、日が沈み肌寒くなった頃に始まった。
スペースシャトルの発射シーンを模したSEが流れる。暗くなった会場でこのSEを聴くと、これから本当に地球ではない別の世界に連れて行ってくれるかのような感覚になった。

メンバーが順にステージに登場し、披露された一曲目は”NAME”だ。”NAME”と言えば、通常セットリストの後半に置かれることの多いNOISEMAKERのアンセム的一曲。「まさかNAME始まりなんて!」と、その意外性に心の中で叫んでしまったが、周りも同じ気持ちだったのか歓声が上がる。Vo.AGの「歌え!」の呼びかけとともに、オーディエンスが手を掲げて歌う。青い照明がステージ上のメンバーを照らし、エモーショナルな曲と相まって一気にNOISEMAKERの世界に引き込まれる。

幻想的な雰囲気に浸っていられたのも束の間、鋭いシンセサイザーが鳴り響く。二曲目はバウンス必須のキラーチューン”Something New”だ。このイントロを聴いてぶち上がらない者はいないのでは?と常々思っているが、やはり曲が流れた瞬間に会場の空気がガラッと変わった。オーディエンスは思い思いに踊り狂い、一気にライブハウスのような熱のある空間に変化する。

続けて三曲目の”SADVENTURES”では巨大なサークルピットが出現。NOISEMAKERのライブでサークルピットを観るのはいつぶりだろうか。オーディエンスはこの数年間で溜まっていたフラストレーションを発散するかのように、全身を使って楽しんでいた。

その後もキレのあるギターフレーズが最高にかっこいい”MAJOR-MINOR”や、coldrainのMasatoをゲストに迎えてボーカルの掛け合いを披露した”Spineless Black”など、勢いを緩めることなくNOISEMAKERのロックをかます。

ライブ中盤には新曲”LAST FOREVER”も披露され、曲前のAGのMCには思わずハッとさせられた。
「世間からの目なんか関係ない。誰が知るっていうんだ、お前が感じてきた痛みを。誰が知るっていうんだ、お前が歩んできた道のりを」「進み続けろ!!」
ちょうど個人的に、仕事で周囲からの言葉と自分の中にある想いが一致せずに悔しい思いをしていたため、それを言葉にされて驚いてしまった。NOISEMAKERはいつも悔しさや迷いを言葉にして、乗り越える力を与えてくれる。それを今回もやられてしまったわけで、より一層NOISEMAKERというバンドの強さに惹かれてしまった。

その後も、「俺たちの折れない旗を見せてやる!」と言って“Flag”を投下。AGがステージを縦横無尽に駆けながら歌っていたかと思えば、客席に飛び込んでオーディエンスと一体になり、フロアはよりカオスな状況に。”Yay Yay Yay Yay Yay Yay Yay Yay”と”Better Days”ではコーラス隊としてゴスペル歌手がステージに登場。幾重にも重なる歌声が多幸感のある空気を作り出した。”Flag”のようなゴリゴリのロックで会場を沸かせたかと思えば、クワイア的楽曲でエモーショナルにさせるバランスの良さはNOISEMAKERならではだと思う。
”Better Days”のサビにある〈Gonna make my better days(この日々は良くなっていく)〉1を会場が一体となって歌い上げ、これからのKITAKAZE ROCK FES.の希望を込めたところで、ライブ本編は幕を閉じた。

途中のMCでAGが、「この20年間で一番パフォーマンスがいいんじゃないの?」と冗談めかして笑っていたが、メンバーそれぞれがMCでKITAKAZE ROCK FES.について語っていたように、想いが乗せられていた分、いいライブを観させてもらったと思う。

また、この日のライブを見て改めて思ったことは、Vo.AGの声の魅力だ。「音」として非常に魅力的だと思う。エフェクトをかけていなくてもどこか加工したかのような人間っぽくない音を感じることもあれば、艶っぽさがあって感情豊かに歌詞を届けてくる。その声が北海道の澄んだ空気に響き渡り、耳から入ってくる音として非常に気持ちがいい。
もちろんボーカルだけでなく、サウンドもそうだ。ドラムやベースの重低音がしっかりとした存在感を放ちながらもフェス特有のやりすぎ感がなく、それでいてギターやシンセサイザーの一音一音がクリアで、出音はかなり大きいが前方にいてもストレスがない。腕のあるPAや機材といった条件もあるのだろうが、他のアーティストの時よりも音の良さを感じたのは、やはりNOISEMAKERの音自体がこの北海道の空気にあっているんだろうと思わざるをえなかった。

気持ちのこもったパフォーマンスを観れただけでも北海道まで来た甲斐があったと思ったが、NOISEMAKERの音を最もいい環境で聴けるのも、このKITAKAZE ROCK FES.なのだと思う。

この地で、このフェスで、より魅力的な音を奏でてくれるNOISEMAKERを観ていきたいと思ったし、そんなNOISEMAKERをより多くの人に観てもらいたい。KITAKAZE ROCK FES.が北海道のロックシーンの中心として、大きな風を巻き起こしながら盛り上がっていく様子をこの目で見ていきたいと心から思う。


1NOISEMAKER “Better Days”(作詞:AG)より歌詞を引用。

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