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King Gnu“SPECIALZ”レビュー|歌詞と音から感じられる「呪い」

9月6日に発売されたKing Gnuのシングル。
アニメ『呪術廻戦』のオープニングテーマに起用されている本作は、CDジャケットやアニメの絵柄が赤色で染まっており、おどろおどろしさを感じるダークな一曲だ。

※本記事では『呪術廻戦』の原作の内容に言及しています。ネタバレにご注意ください。

King Gnu“SPECIALZ”レビュー

呪術廻戦とKing Gnuのタッグと言えば、『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌“一途”と“逆夢”が思い起こされる。
この2曲は劇場版に合わせて「愛」をテーマにした曲であったが、“SPECIALZ”では一変して「純粋な邪悪さ、そこから生まれる愉悦」といったものを感じる。
というのも、“SPECIALZ”は主人公と対峙する敵側のキャラクター「真人」や呪霊たちの視点で書かれた曲だという。

*以下、King Gnu “SPECIALZ”(作詞:常田大希)より歌詞を引用。

〈今際の際際で踊りましょう 東京前線興の都〉という歌詞からは、まさに「渋谷事変」で人々を蹂躙する呪霊たちの邪悪な愉快さが感じられるし、〈心燃える一挙手一投足 走り出したらアンコントロール〉で、主人公・虎杖との戦いを心から愉しむ、真人の様子が想像できる。

そして曲中で何度も繰り返される〈U R MY SPECIAL〉という言葉(読みはYou are my special.)。
真人にとって、自分を真に愉しませてくれる虎杖は特別な存在であり、同時に真人は自分こそが「呪い」だと、他の呪霊たちよりも際立つ存在であることを戦いの中で自覚する。理由もなく人を殺める純粋な悪である真人は、理由にこだわらず人を助ける鏡合わせのような虎杖に「オマエは俺だ」と言い放つ。
曲中では〈U R MY SPECIAL〉から、徐々に〈WE R SPECIAL〉という言葉の数が増えていく。真人の戦いの中での気付きや生まれた感情といった変化が、曲の中でも上手く表されているように思う。

もちろん歌詞だけではない。
冒頭から曲の最後までほぼずっと鳴り続ける電子音が不安定さを演出し、ミドルテンポで展開される本作はアニメのオープニングテーマとしては異端だ。それでも、しっかりと体を揺らしたくなるリズムが曲を支えていたり、地鳴りのようなベースが存在感を増していったところで〈無茶苦茶にしてくれないかい?〉とサビに入ったりと、聴けば聴くほど世界観に没入していく仕掛けが散りばめられている。

歌詞にしても音にしても、その世界観の解像度の高さに、アニメやドラマのタイアップを数多く手掛けているKing Gnuの手腕が感じられる。
“一途”や“逆夢”とも全く異なるアプローチで見せてきた“SPECIALZ”。改めてKing Gnuの引き出しの多さと表現力に驚嘆させられる一曲である。


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