平井大『SURF & TURF』レビュー|肩肘張らずに自然体で
休日に聴きたくなる音楽。私にとって、平井大の楽曲はそういう位置づけだ。
6月25日に配信リリースされたEP『SURF & TURF』。5月にはベストアルバム『LOVE+PEACE』が発売されたばかりでリリースペースの速さにも驚くが、そもそもベストアルバム制作時に平井が感じたことが、今回のEP制作に繋がっているらしい。SNSで、彼は以下のように語っている。
「今年はベストアルバムのリリースもあり、過去の曲達に触れる機会も多かった。」
「ここでもう一度デビュー当時に立ち返り、「平井 大とは?」という問に対しての答えを出す必要があるように強く感じ、制作に取り掛かったのがEP “SURF & TURF”」(※1)
その言葉を表すように、収録の5曲は王道ポップスというより、彼がルーツとして挙げているサーフミュージック・カントリー・レゲエといった要素が強い。近年はギターをメインとした曲も多かったが、「Wonderful Life」や「Endless Summer」のようにウクレレの音色を取り入れた曲が目立つのも特徴だろう。聴いていると、青い空や海といった夏らしい風景が思い浮かんでくる。
一方で、曲中で歌われていることは前から一貫しているように思える。
「Wonderful Life」(作詞:EIGO(ONEly Inc.)/Dai Hirai)の〈気負わず歩いて行こうよ一緒に/合言葉は“Slow & Easy”〉や、「Lovely Day, Lovely Place.」(作詞:EIGO(ONEly Inc.)/Dai Hirai)の〈少し早いこの街の速度なんてさ/気にせずゆこう〉。彼の楽曲にあるのは、例えるなら後ろから背中を押してくれる強さではなく、隣でそっと寄り添ってくれる優しさだ。日々生きていく中で、もちろん前者のような自分を突き動かすメッセージを求める時もある。ただ、常に前だけを見て全力疾走していたら人は疲れてしまう。息が切れそうになった時に、少し立ち止まって周りをゆっくり眺めさせてくれるのが、平井大の音楽だと思う。冒頭で“休日に聴きたくなる音楽”と称したのは、これが理由だ。
肩肘張らずに、自分のペースで行けばいい。無理に背伸びしなくたって、人生は十分楽しいのだから。『SURF & TURF』には、そんな穏やかな気持ちにさせられる楽曲が詰まっている。心地よいサウンドに耳を傾ければ、きっと、ワクワクすることを考えてしまうはずだ。もう7月。さあ、今年も夏が始まる。