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マネスキン『RUSH!』レビュー|往年のロックと現代価値観が融合されたアルバム

今、世界で最も期待されていると言っていい若手ロックバンド、マネスキン。

昨年SUMMER SONICで初来日を果たし、自由なパフォーマンスで話題をかっさらっていたことも記憶に新しい。
そんな彼らが2023年1月に、アルバム『RUSH!』をリリースした。初めて聴いた時は取り立てて魅力を感じられなかった、というのが正直なところだ。各音楽メディアがこぞって取り上げるほどだろうか、と。
だが、繰り返し聴いていると、彼らの表現したいことが見えてきた。

それは、『これまでのロックミュージックへのリスペクトと現代価値観の融合』だ。

例えば、アルバム発売に先駆けて公開されたM2″GOSSIP”では、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロをフィーチャリングに迎え、M16″SUPERMODEL”のイントロには、ニルヴァーナの”Smells Like Teen Spirit”を連想させるギターリフがある。いわゆるZ世代であるマネスキンが、80~90年代のバンドに影響を受け、その要素を楽曲に取り入れているのが特徴的だ。

一方でその2曲で歌われている内容は、どちらもアメリカ社会が作り出す「固定化された美や価値観」に対するアンチテーゼ。ジェンダーレスなビジュアルや振舞いが注目されるマネスキンの「自分らしさ」を大切にするメッセージが、往年のロックを活かした曲に乗せて発せられているのが面白い。

最初に聴いたときに特別驚きを感じられなかったのは、前作の『Teatro d’ira-Vol.1』と比較するとだいぶポップになっていること、英詞が多くを占めていることが理由だろう。本作はボーカルが際立ち、ダンサブルに仕上がった曲が多くを占めている。さらに彼らの母国語であるイタリア語が生み出していた独特なリズム感が英詞になったことで薄れてしまったように思う。
だがそれも、彼らのロックと主義主張を世界に届けるために、効果的にポップにアップデートされた結果なのだ。ロックミュージックの真髄である反骨精神は歌詞からも彼らの振舞いからも大いに感じられる。そして往年のロックスターへのリスペクトも。

マネスキンのメンバーはまだ20代前半。彼らのロックはきっとこれから先も、その時々で変化を遂げることだろう。いったいどんな表情を見せてくれるのか。今からそれが楽しみだ。

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