LEGO BIG MORL、多彩な魅力に溢れた『月と太陽』ツアーファイナル ライブレポート

LEGO BIG MORL の~Acoustic&Rock~TOUR2023『月と太陽』ファイナル公演が、5月30日(火)と5月31日(水)に東京・代官山SPACE ODDにて開催された。1日目が月編のアコースティック編成、2日目が太陽編のバンド編成という構成で多彩なバンドの魅力を味わうことができる充実の内容だった。

LEGO BIG MORLがこのような企画を行うことは初めてではないが、前回の『月と太陽』は2018年で、5年の月日が経過している。2日連続の平日開催にも関わらず、この日を楽しみに待っていた多くのファンで両日ともライブハウスは埋め尽くされていた。


1日目 月編

1日目の月編はステージセットがカナタタケヒロ(Vo,Gt)の家というテーマで作られていた。真ん中に置かれた、月を思わせるような球体のデスクライトや、そばに置かれたバケットハット、ステージ下のスピーカーに立てかけられたHi-STANDARDのレコード、スラムダンクの映画のパンフレット、ツアーグッズのTシャツとIKEAの袋がかけられたハンガーラックなど生活感のある空間を眺めているだけで開演前からわくわくさせられるし、5年前の演出を踏襲している懐かしさも感じられた。

開演時間の5分前にカナタとタナカヒロキ(Gt)の2名がおもむろに登場し、そのままゆるやかにトークタイムに突入した。観客にどこから来たかを尋ねたり、突然ゆずの「夏色」を歌ったりと、出だしから面白さのギア全開の状態で、会場を沸かせた。すると突然、バイクの音が響き、ピンポーンとチャイムの音が鳴り、遅刻してきたという設定でヤマモトシンタロウ(Ba)とサポートメンバーの吉田昇吾(Dr / UNCHAIN)が入場した。この時点で、普段は観られないショートコントの演出に肩の力を抜いて笑っていたが、後から振り返るとこれは油断させる作戦だったのではないかと勘繰ってしまうほどに、ライブの盛り上がり様に”アコースティックとは?!”と驚かされた。

新曲ができた設定でコード進行を確認する会話の流れから演奏された「bubble」は、それぞれの楽器がより際立っており、ヤマモトのベースの重低音や吉田の演奏するカホンの音が非常に良い味わいを醸し出していた。全然違う曲のような、ゆったりとしたテンポで陽気に届けられる「ワープ」、紫とオレンジの今回のツアーカラーの照明の中で余韻を楽しむような「バランス」は、このアレンジだからこその自然な繋がりがあった。タナカによるサビのメロディーのギターソロから始まった「気配」は、アウトロのスキャットを歌う観客の歌声の響きが美しく、それを聴くメンバーもとても嬉しそうな良い表情をしていた。

一曲一曲へのアレンジのこだわりに序盤から聴き入っていると、本人たちも思い入れが強いのか「このアレンジでやるのは最後かと思うと…」とヒロキが名残惜しそうに呟く場面もあった。アコースティック編恒例のカバー曲として用意された宇多田ヒカルの「First Love」では、カナタの力強さと切なさが入り混じった歌が楽曲と非常にマッチし、うっとりとしたムードに包まれた。

”明日がロックだからって、今日は俺らが優しくしっとり歌いきると思ったら大間違いです!”

楽しみながらもどこか落ち着いたテンションの観客の心を見透かしたかのようなヒロキの一言が放たれた後は、その言葉通りにエキサイティングなライブが続いた。「マイアシモト」の間奏でのセッションのようなパフォーマンスが熱いグルーヴを生み出し、「心とは~kolu_kokolu~」はむしろアコースティックの方がエネルギッシュで切迫した感じがあり、新鮮だった。「あなたがいればいいのに」は、より重厚なバラードとなっていた。同じ曲のこんなにも違う表情が見られるのは本当に楽しい。カナタが一人ステージに残ってソロで披露した「OPENING THEME」では、ステージをアクティブに動き回りながら観客を煽り、サビの部分は大合唱となった。曲が終わるとカナタと入れ替わって登場したヤマモトが”ほとんど歌わせてたね。マニアックな曲歌えるのすごいな。”と言うと、タナカが”お客さんに歌わせるのはMr.Childrenでも「innocent world」くらいなのに、俺たちのとっての「innocent world」が「OPENING THEME」な訳ないやろ!”と、ここでもメンバー同士の愉快なトークを繰り広げる。「愛を食べた」ではカナタが観客の後ろから登場するサプライズもあり、テンションはどんどん上がっていった。

”代官山SPACE ODDにでっかい虹をみなさんと一緒に虹をかけられたらと思います!一人でも欠けることのない、光を届けてください。この曲ではみなさんの心が少しでも解放されたらと思います!”とカナタの奮い立たせるような言葉から「RAINBOW」が披露されると、この日の盛り上がりは最高潮に達した。グッズとして販売されていたレーザーポインターやスマホのライトで観客が光を灯し、今までの「RAINBOW」(作詞:LEGO BIG MORL)を超える、会場全体でこの空間を作り上げているという一体感が生まれていた。<雨上がり/虹がかかった/雲に乗り/虹がかかった>の部分を会場を三分割して大きな声で歌い合ったり、カナタの”ジャンプ!”の煽りで、虹色の照明とミラーボールが輝く中、観客が手を挙げて飛び跳ねたり、音楽を全身で楽しむ世界が戻ってきた喜びを実感できるような時間だった。

”この数年間で失った、みなさんの声や笑顔を取り戻すようなツアーだった。みなさんからもらったものをちゃんと僕らの心に刻んでいきたい。”

真剣な表情で語るタナカのMCの後、本編最後に相応しいその言葉に込められた想いにぴったりとはまる「nice to」(作詞:LEGO BIG MORL)が届けられた。4人のアンサンブルによって、<当たり前の忘れ方を人はよく知ってる/だから今/当たり前を忘れないように/忘れないように歌にしよう>という歌詞を観客の心により深く染み込ませ、幕を閉じた。

アンコールで再登場すると、グッズ紹介や新しい試みであるLBA(ファンクラブ)でのツアー打ち合げ生配信を後日行うという告知が、やはり演奏時とは大きなギャップのあるユーモラスな雰囲気で行われた。”最後にイヤなことも含めて、ここで終わらせていこうぜ!また明日からまた笑顔でいられるように!”というカナタの声に応じるように、「テキーラグッバイ」でも、曲中のメンバー紹介へのレスポンスやサビ部分で多くの手が挙がり、熱狂の渦の中で締めくくられた。

大阪と名古屋ではイスがあったようだが、東京はオールスタンディングで大正解と思えるほどに、アコースティック編にも関わらず非常にロックな夜だった。明日の太陽編もあるけれど、このツアーファイナルがまたLEGO BIG MORLの音楽の旅の始まりとなるような気がした。


2日目 太陽編

昨日と同じ時間に同じ会場に来たはずなのに、なんだか雰囲気が違う。開演時間になり、エレクトロなSEが始まると正面には月面の映像が流れ始めた。そして、映像が太陽に切り替わるとメンバーが登場し、太陽に月が重なるとLEGO BIG MORLの文字が浮かんだ。太陽編も5年前のようにVJ(ビジュアルジョッキー)による映像演出やメンバー全員が白い衣装というところが粋である。
”Are you ready?月と太陽ファイナル!”とカナタが叫び、「火の無いところの煙は僕さ」で爆発力のあるスタートを切ると、吉田による軽快なドラムビートから観客の”1,2,3,4”というカウントで「正常な狂気」がさらにそのテンションを底上げした。間髪入れずに、「君の涙を誰が笑えるだろうか」と「Hit song crazy」といったアッパーな曲が続けられる中、カナタの歌い方にも序盤から感情が入っていて、言葉が自分の方向をめがけて飛んでくる感覚になるような迫力があったし、観客のシンガロングもそれに負けないくらいの圧があった。

気分が高まった観客の”ひゅーーー”という歓声が飛び交う中、タナカが”今日はツアーファイナル来てもらってありがとうございます。みなさん溜まっていましたね、この4曲を見る限り。レゴのお客さんは大人しいで有名だったのにおかしくなっちゃってますね。逆になんで今までやってくれなかったん?”と、この状況に少し驚きながらも喜んでいることを伝えた。そして”コロナ禍で失ったものをこの場で全部取り戻して帰りたいと思います!”とこのライブへの気合の入った言葉に今夜もすごいことになりそうだと期待が高まった。

このMCから申し分のない流れで、コロナ禍を意識した高速BPMの「潔癖症」を貫禄のあるプレイで演奏し、バンドの技術力の高さを見せつけていく。それに続く3曲はまさにVJ祭りといった感じで、「問う今日
」では街を表現したアニメーション、ヤマモトのベースで始まる「Hello Stray Kitty」では様々な猫のコミカルな映像、「スイッチ」ではシンプルな右から左へスライドするスマホの電源ボタンなど、曲の世界観により浸れる映像がライブを彩った。ここで前日の月編でもセットリストに入っていた「あなたがいればいいのに」が披露され、アコースティックでの森の中にいるような深みとはまた違った、ドラマティックな曲調を堪能することができた。2日連続で行くことによる贅沢はこういうところにあるのかも知れない。
「end-end」では鼓動の数が決まった世界のお話という曲のテーマを、BPMをカウントダウンしていく数字で表現が胸に刺さった。タイミングを合わせるために、背後の映像を確認しながらドラムを叩く吉田の献身的な姿も印象的だった。

中盤のMCでは、タナカが昨晩のアコースティックライブの映像をSNSに載せたことに対して”これまで恥ずかしかったけど、喜んでもらえることをちゃんとしていこうと思った。”とこれからはオープンにしていきたいという想いを語り、ヤマモトは”楽しいね!!ライブ!ほんまに!”と、こうして大勢の前でライブができる幸せを噛みしめるようだった。

カナタの”みんなと一緒に歌いたいと思って作った曲です。みんなの声が俺の心まで届くように、歌ってください。というか歌え!”と情熱的な呼びかけで始まった「Blue Birds Story
」は、昨日に引き続き観客が各々の手元でライトを照らし、サビ部分では<Blue Birds Story
>の大音量のコーラスに心が震えた。「Hybrid
」「cinderella syndrome」は、よく動くベース、歪んだギターソロ、パワフルなドラムビートが炸裂し、後半戦の起爆剤となった。ステージ上でのあまりに激しい動きを物語るように、ギター組のシールドが絡まってしまうシーンも太陽編ならではの光景だ。

”昨日だけの人、今日だけの人もいると思うけど2日間ありがとうございます”とタナカが改めて感謝を伝えた後、”まだ言えないけれど、3人にとっての目標がある。今日も裏でその目標に向かっていこうと円陣を組んで、16年目の青春をできているようでエモかったです。みなさんにも一緒にその輪の中に入ってくれたら嬉しく思います。”とバンドの新たな夢について語った。

背景にMVを映しての「bubble」や真っ赤な照明の中での「愛を食べた」、メンバーのモノクロ映像を鏡のように映した「
Strike a Bell」と終盤にかけてますます気合が入り、良くなっていく演奏に胸が躍る。カナタが”いつ終わるか分からないようなことをやっているけど、いつまでも何かもっとという気持ちがある限りはずっと歩いて行けると思います。”と直前に歌った「Strike a Bell」に重なる想いを口にし、”僕の人生、バンドはこれだけで充分です。死ぬまでこのメンバーと歌い続けたい。たくさんの約束事をみなさんと作っていけるようにがんばります!”と頼もしい宣言をした。本編のラストはゆったりとしたバラードの「大きな木」で、LEGO BIG MORLにとってのロックとは曲調だけの話ではなく、もっと深く根を張った魂のことなのだろうとその心意気が琴線に触れた。 

アンコールでは、昨日同様のグッズの話や本日のVJを務めているRyoma Matsumoto(the McFaddin)が紹介された。「RAINBOW」で再び観客のボルテージを上げ、”最後にもう一曲”とぶち込まれた「Wait?」では、真っ赤な背景に白抜きでWAIT?の文字が浮かび激しく切り替わる照明の中で、ヤマモトのベースソロを合図に会場が沸き立ち、ハンドマイクになって全身の力を振り絞るように歌うカナタ、頭が飛んでしまうのではないかと思うほどに髪を振り乱してギターを弾くタナカ、今この瞬間、東京で一番アツいのはこの箱だと確信できる時間だった。4人による渾身のアウトロから曲が終わった瞬間、スクリーンに”Monthly One-man Live 〜 Something New ”ONE” 開催決定”のサプライズ発表があり、驚きと喜びの”きゃー”という声がしばらく収まらなかった。『月と太陽』ツアーの終わりに、新たな始まりを早速約束してくれる有言実行さに痺れてしまった。ちなみに、MCで言っていた目標はこのマンスリーワンマンのことではないとのことで、目標が気になるところではあるが、まず実験的に挑むこの企画がどうなっていくのか楽しみだし、終わった瞬間から早くLEGO BIG MORLの音が浴びたくて仕方がない気持ちだ。

月編のアンコールのMCでタナカが、”いつもLEGOのことをどんなバンドと説明すれば良いのか迷う”と言っていたが、私は“カメレオンのように多彩な色を纏うことのできる、飽きのこないバンド”だと勝手に思っている。新しい目標に向かって挑戦を続けていく、まだ見ぬ知らない表情のLEGO BIG MORLをこの目に、耳に、心に、焼き付けていきたい。


20230530月編セットリスト
01.bubble
02.ワープ
03.バランス
04.気配
05.First Love(宇多田ヒカルcover)
06.マイアシモト
07.心とは〜kolu_kokolu〜
08.OPENING THEME (カナタタケヒロ ソロver)
09.愛を食べた
10.あなたがいればいいのに
11.RAINBOW
12.nice to
En.テキーラグッバイ

20230531太陽編セットリスト
01.火のない所の煙が僕さ 
02.正常な狂気
03.君の涙を誰が笑えるだろうか
04.Hit song crazy 
05.潔癖症
06.問う今日 
07.Hello Stray Kitty 
08.スイッチ
09.あなたがいればいいのに
10.end-end
11.Blue Birds Story
12.Hybrid
13.cinderella syndrome
14.bubble
15.愛を食べた
16.Strike a Bell
17.大きな木
En1.RAINBOW
En2.Wait?

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