WALTZMORE、これまでの物語と新たな旅への期待に溢れた“祝祭”ツアーファイナル

WALTZMOREの2nd full album 『CHILDREN』リリースツアー”祝祭” ファイナル公演が、4月29日(土)に東京・新代田FEVERにて行われた。

WALTZMORE(ワルツモア)は2019年5月に活動を開始した4人組バンド。自らを“アートロックバンド”と称する彼らの音楽は自由で多彩。2022年5月には自主レーベル「FLOWERCHILD.」を立ち上げ、儚さの中の強さを感じられる独自の世界観にさらに磨きをかけてきた。今回のツアーは1月にリリースされた3年ぶりのフルアルバム『CHILDREN』のリリースツアーだが、本作は“一枚を通した「冒険譚」”というコンセプトの作品である。この公演は全国ツアーというバンドとファンの冒険の終着点であり、加えて前日にSNS上で「今後の活動に関わる重大発表があります。」との告知もあったため、期待と不安の入り混じった空気が会場を満たしていた。

まずは、対バン相手である広島出身バンドのアメノイロ。が登場。ようやく同世代同士でライブができる喜びを爆発させ、等身大の音楽を届けた。MCではWALTZMOREメンバーとの仲の良さを窺える愉快なエピソードを語っていたが、ライブ初披露の新曲「愛してた」をセットリストに組み込むなど、十分すぎるほど会場をあたためたステージだった。

浮遊感が漂うSEが流れるとステージにWALTZMOREのメンバー、こうのいけはるか(Gt/Vo)、夏未(Key/Vo)、アライユウセイ(Ba)、木挽祐次(Dr) とサポートメンバーの中村涼真(Gt)の5人が登場した。全員がそれぞれに似合ったテイストの黒い衣装に身を包み、登場シーンから統一された雰囲気を醸し出していた。

こうのいけが優しく語りかけるような歌声で〈はなしをしよう ぼくらが出会う前のふたりのはなし〉と「ダイアログ」(作詞:こうのいけはるか)を歌いはじめ、心地よい三拍子のアンサンブルが重なっていく。こうのいけがクラップを煽ると観客も待ってましたと言わんばかりに、軽快に手を叩き、手拍子の音とバンドの演奏が心地よく混ざり合っていた。初期の楽曲であり、旅や物語の“はじまり”がテーマのこの曲を最初に持ってきたのは、このライブに大きな意味を持たせたいという気持ちの表れだろう。

続けて流れるようにして演奏される「大展覧会」のイントロの軽快なリズムに合わせ、今度は夏未が笑顔で会場を見渡しながら大きく手を叩くと、それに続いて観客の手拍子が鳴り響いていく。序盤の2曲ですでに大きな盛り上がりをみせ、多幸感に溢れていた。

3曲目の「FESTIVAL」では、身体の奥底に響くような木挽のドラムやアライのベースの低音によって音源よりもさらに壮大なイメージが広がり、ツアータイトルの“祝祭”ムードが一気に高まる。ロック色の強い「ステンドグラス」から、ライブならではのオルゴールのようなキーボードアレンジで曲間をつなぎ、こうのいけと夏未の歌声のユニゾンが美しい「メランコリア」が演奏された。3〜5曲目がアルバム通りの流れになっていたことで、一気にWALTZMOREの世界観へ引き込まれていった。

最初のMCパートでは、こうのいけが充実した全国ツアーでの日々を振り返った。「たくさんの街で受け取ったことを全部噛み締めながら歌います。みなさんも人生で歩んできた道のりを思い出しながら聴いてほしいです。」と語り、「夜明けについて」へ繋げた。続く「Lights out」では『CHILDREN』の音源収録にも参加している中村が、ステージ前方に移動し、温もりのあるギターソロを奏でた。不安な気持ちをそっと溶かすような音色は、この曲になくてはならないと感じさせるものだった。

曲が進むにつれて会場の緊張感も解けてきた頃には、いつものWALTZMORE節に溢れる和やかなトークタイムが始まった。声出しOKということで、コールアンドレスポンスを試みた木挽が「(ツアーから)ただいま〜!」というと、なかなかのボリュームで「おかえり〜!」と返事があった。最初から良い感じのレスポンスがあると思っていなく、戸惑う木挽の姿につい笑ってしまったが、それだけ会場が盛り上がっていたということだろう。
こうのいけからもアメノイロ。との仲良しエピソードを紹介し、同世代のかっこいいバンドとツーマンできたことの喜びと感謝が語られた。

ゆったりとしたバラード調の「Angel」から、ジェットコースターのようにテンションの差がある「Space迷子」と音楽性の幅広さを見せつけるように畳みかけ、いよいよ本編もラストに差し掛かるところでこうのいけから「今日はみんなへお知らせしたいことがある」と口火が切られた。

これまでのWALTZMOREの歩みを中学生時代の同級生である中村やアライとの思い出、そして夏未や木挽との出会いを織り交ぜて振り返り、『CHILDREN』という作品はメンバーだけでなくこれまで関わってきた人々全ての力を集結させてできた最高のアルバムで、同時にこの4人のメンバーとしてできることは一旦終わったと思ったと切実な表情で語っていく。場内に緊張が走る中、ついに大きな発表がされた。

「でも、WALTZMOREが俺にとっての生きる理由なんです。『CHILDREN』のリリースは一つ成し遂げたけど、もっともっと先の景色をみたいと思っています。」

「ずっと考えていたことがあって、俺の音楽人生には彼の存在があって。俺の歌う理由は彼の鳴らすギターだと思っていて。俺たちは4人のWALTZMOREを今日で終わらせて、初期メンバーの中村涼真を迎えて5人のWALTZMOREを再始動します!

WALTZMOREの母体となった「Goodbyes」時代のメンバーでもある中村の再加入の発表がされると、会場内は大きな祝福の拍手で溢れかえった。

ギターをかき鳴らしながら心の叫びを精一杯伝えた情熱的なMCから近代的なサウンドの「COLD CITY GIRL」で本編は幕を閉じた。

アンコールでは、1週間後に迫ったバンド結成記念日の5月7日にワンマンライブを行うというゲリラ的な発表や6月と7月の企画イベントなど今後の活動の告知がされた。そして、1年以上サポートギターとしてWALTZMOREを支えてきたミネムラがステージ上に呼ばれ、6人で「Knock the door」が演奏された。ミネムラが演奏しながらメンバーそれぞれと目を合わせて「ありがとう」と大きな口を開けて伝え、それに笑顔で一人ひとりが応えている姿に、単なるサポートとメンバー以上の関係だということが伝わってきた。これからのバンドの再始動を後押しするような熱いギターソロはその場にいた全員にとって忘れられない音となったに違いない。曲終わりにこうのいけとハグをしてミネムラがステージを去っていくと、続けて新生WALTZMOREの5人による「SWANDIVE」が届けられた。これまでの集大成、そして、新たな物語をこの5人で紡いでいくという覚悟とはじまりへの希望を感じられる力強さを放ちながら、今宵限りの“祝祭”は締めくくられた。

お互いの音楽人生の原点に関わる存在が、かつて一緒に音楽をやっていて、訳あって離ればなれになったけれど、再び一緒に音を奏でることになった。出会いと別れを繰り返す人生の中で、ドラマのような奇跡だと思う。〈今、あなたに出会えた瞬間に 僕の世界は産声を上げる ずっと探していた 命の理由を見つけたんだ〉ファイナル公演を観てから、「FESTIVAL」の歌詞がWALTZMOREというバンドのストーリーと重なって、より一層深みを増して心に響く。元の5人に戻るのではなく、これまで築き上げてきたものを掛け合わせて、新たな5人で再スタートを切った彼らはこれからどんな景色を見せてくれるだろうか。彼らと一緒にどこまでいけるだろうかと、子どものように心が躍る素敵なライブだった。

WALTZMOREの“旅は続いてゆく、祝祭のその先へと”。

■セットリスト

1.ダイアログ
2.大展覧会
3.FESTIVAL
4.ステンドグラス
5.メランコリア
6.夜明けについて
7.Lights out
8.シティライト・ラプソディ
9.hope
10.Angel
11.Space迷子
12.COLD CITY GIRL
13.en1. Knock the door
14.en2. SWAN DIVE

■WALTZMORE オフィシャルサイト

https://www.waltzmore.com/

関連記事一覧