UVERworld「VIVA LA ROCK2023」ライブレポート
ライブを観ながら思わず2021年のVIVA LA ROCKを思い返していた。
この2年間失ったものもあったが、得られたものも大きかった。そう感じた夜だった。
UVERworld VIVA LA ROCK2023 ライブレポート
2023年5月3日、今年で10周年となるロックフェス「VIVA LA ROCK2023」が幕を開けた。
まず会場周辺に着いて驚いたのはその賑やかさだ。4年ぶりに復活した「VIVA LA GARDEN」もあって、多くの人で溢れている。
新型コロナウイルスが猛威をふるっていた2021年、ロックフェスの先陣を切って開催されたVIVA LA ROCK2021は、多くの規制がありフェスが開催されているのか疑うほどの人の少なさだったことを覚えている。(大々的にフェスを開催することがまだ難しい情勢の中、VIVA LA ROCKは万全の対策をもって開催してくれた。一音楽ファンとしてあの当時フェスに行けたことはとても心が救われた。)
そこから2年、ここまで賑わいを取り戻したことに感慨深いものがあった。
そんなVIVA LA ROCK2023で、初日のSTAR STAGEのトリを務めたのはUVERworldだ。
UVERworldは「常にチャレンジャーでいたい」という思いからフェスでトリは務めないのだが、彼らが信頼しているVIVA LA ROCKのプロデューサー・鹿野氏の頼みにより、今回メインステージでのトリを引き受けたのだという。
ライブは真太郎(Dr.)のドラムソロからスタートした。
一曲目は”Making it Drive”だ。フェスの一曲目にしては緩やかな立ち上がりだが、バンドの信念を示した曲であることを考えると始まりにふさわしい。EDMやヒップホップ要素を織り交ぜたこの曲で、観客のレスポンスとともにグルーヴを生み出していく。
続いて、「全員で声出して歌え!」と、TAKUYA∞(Vo.)の叫びとともに投下された”IMPACT”。TAKUYA∞は客席に飛び込み、サビで一斉に観客のジャンプとコーラスを煽ってフェスの空気をワンマンライブかのように自分たちのものに掌握していく。
そのまま”Touch off”、”PRAYING RUN”と、どれも観客のレスポンスが要となる曲を繰り広げ、会場のボルテージを上げ続ける。
ここまではある意味「いつものUVERworld」だ。この先のMCからは、コロナ禍を経てのバンドの変化が感じられた。
「さっきダイブしてる人もいたけど、しなくていいよ。ダイブって、あれ俺たちのためにやってくれてたんだろ?盛り上げなきゃって。大丈夫、俺たちはこの3年間モッシュやダイブがなくてもかっこいいライブをしてきた」
TAKUYA∞がそう言って始まったのは”AVALANCHE”だ。2021年にリリースされたこの曲は、まさにコロナ禍でのバンドのあり方が歌われている。
〈その笑顔が布で覆われ隠された日も 君の姿が遠く離れ見えなくとも / 不安じゃなかったよ ここにたどり着くまで / 目に見えたことない愛を信じてきたから〉1
マスクで顔が見えず、ライブで声出しができなくても、その中で工夫を凝らしてライブをしてきたバンドだ。これまでのUVERworldの歩みが、コロナ禍での活動をマイナスな状況のまま終わらせることを許さなかった。それを実行してきたからこそ自信を持って曲だけで勝負すると言い切ることができ、さまざまな制限が解除された今、改めて観客へ示すことでこの3年間の意味をしっかりと見せつけた。
続けて披露された”在るべき形”もそうだ。「この3年間、今まで通りのライブができなくても、俺たちが未来に絶望することはなかった」曲前のTAKUYA∞のこの言葉とともに、UVERworldというバンドの生き様が高らかに歌い上げられる。2014年のリリース時からブレない、彼らの「芯」を改めてVIVA LA ROCKで宣言したのだ。
サビの軽やかなシンセサイザー、ステージ後方に映し出されるリリックビデオの煌めき、疾走感のある彰(Gt.)のギターソロ、これら全てがこのVIVA LA ROCKの未来を明るく照らし出すかのような、そんな希望ある演出に心が躍る。
そして「今俺たちが一番大切にしている曲」と言って始まった”EN”。厳かなイントロの中、モノローグのように歌が始まった時、私は自然と2年前のVIVA LA ROCKを思い返していた。VIVA LA ROCK2021でも”EN”を聴いたが、その時は未来が今よりも不明瞭で、”EN”の力強いメッセージとサウンドで不安を払拭させるかのように聴いていた。
だが今は、自分はどうあり続けるべきか、どう人生を歩みたいのか。自分自身の頭で考え、選択することを意識しながら聴いていた。そう思ったのもこの日のUVERworldのライブが、コロナ禍で培った自信や力強さを存分に見せてきたライブだったからだ。「俺たちは進み続けるけど、お前はどうすんだよ?!」TAKUYA∞のこの言葉とともに、”EN”のメッセージを改めて心に刻んだ。
この日最後の曲は、まだリリースされていない”THEORY”だ。〈僕らの人生は僕らだけのもの / でもこのバンドは君の人生でもあるんだね〉2という歌詞の通り、この曲はUVERworldとファンの関係性、それについてのバンドの想いが綴られている。曲の前にTAKUYA∞はUVERworld以外のファンに向けて「今日出たほかのアーティストの音楽は、あなたの人生でもあるんでしょ」と投げかけていた。コロナ禍でライブが一切開催されない、そんな状況になって感じたのはいかに音楽が自分にとって大切なものだったかということ。この曲を聴き、それを改めて噛みしめた者も多かったのではないだろうか。
客席には曲の始まりとともに大量の風船が降り注ぎ、一気に会場がカラフルな光景へと変化する。その多幸感あふれる演出にステージ上のメンバーも笑顔を見せ、この日のライブを締めくくるにはベストな選曲と演出であった。
こうしてVIVA LA ROCK2023の初日は幕を閉じた。
コロナ禍を経て変化したバンドのあり方、同時に変わらなかった強さを見せつけられたライブだった。それをさまざまな制限が解除されたVIVA LA ROCKで観ることができたのは、これからの音楽への向き合い方を考える一つのきっかけになるかもしれない。
そんなことを考えながら、私は年甲斐もなく風船を大事に抱えて電車に乗り、帰路についたのだった。
2023.5.3 UVERworld @VIVA LA ROCK2023 STAR STAGE
リハーサル:ナノ・セカンド
1.Making it Drive
2.IMPACT
3.Touch off
4.PRAYING RUN
5.AVALANCHE
6.在るべき形
7.ピグマリオン
8.EN
9.7日目の決意
10.THEORY
1UVERworld “AVALANCHE”(作詞:TAKUYA∞)より歌詞を引用。
2UVERworld “THEORY”(作詞:TAKUYA∞)より歌詞を引用。
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