家主Live Tour 2023 東京公演ライブレポート

※注意※
 ツアー初日公演のため、本記事の内容はライブのネタバレとなる可能性がございます。
 ご注意ください。


4人組ロックバンド家主 の『Live Tour 2023』東京公演が、6月16日(金)に東京・渋谷CLUB QUATTROにて行われた。 

定刻になると、特に会場SEは大きくなることなく、田中ヤコブ(Vo,Gt)、田中悠平(Vo,Ba)、谷江俊岳(Vo,Gt)、岡本成央(Dr)の4人がさらっと登場し、観客から大きな拍手で迎えられた。ヤコブは”東京って人がいっぱいいるんですね”と、チケットソールドアウトで超満員の会場に喜びを感じている様子だった。マイペースに乾杯したり、フジロックのミヤジ(宮本浩次/エレファントカシマシ)のモノマネをしたり、ゆるりとしたトークで会場を和ませスタートを切った。

1曲目の「Cheater」はゆったりとした曲調ながらも、息の合ったバンドアンサンブルに魅了された。一緒に遊んでくれた近所のお兄ちゃんや、ささやかな挨拶を交わす若者、目立たない同級生など、身近な存在が実はとてもかっこいいロックバンドをやっていた!という驚きと親近感が同時に押し寄せるようだった。

続けて繰り出される「茗荷谷」や「家主のテーマ」では、イントロの時点で歓声が上がり、これらの曲をライブで浴びることを大勢が待ち望んでいたことが窺えた。特に「家主のテーマ」(作詞:田中ヤコブ)では<早く見つけて>という歌詞を大きな声で歌っている観客が多かった。促されて声を出したり、手を挙げたりするのではなく、彼らの音楽を聴いていたら自然に出てしまうといった感じで、溜まったものを吐き出している快感があった。この曲自体は<家主の曲はいつでも君の見方なのにさ/どうしてこう伝わらないの?>とバンドを視点に描かれているわけだけれど、早く見つけてほしいという誰かに認められたい気持ちは家主だけじゃなくて皆が持っているからこそ響くものがある。ライブでこの曲を体感することでそんな新しい発見があった。

最初のMCタイムは「茗荷谷」は北海道にいる友人との学生時代を歌ったというエピソードや明日は朝の8:00から草野球の練習があることを楽しそうにヤコブが語り、一呼吸ついたところで、岡本のドラムを合図に5曲目の「生活の礎」が投下された。悠平の伸びやかな歌声とヤコブと谷江による華やかなギターが溶け合って心地よい。続けて、「夏の道路端」では一気に幻想的な雰囲気の演奏そして谷江の淡い歌声のボーカルが響き渡る。家主には3人のシンガーソングライターがいるため、作詞作曲によってボーカルがチェンジするのもライブを観ていて楽しいポイントのひとつだ。1~7曲目までの流れは音源化された『DOOM』リリースツアー公演とまったく同様であったが、非常にバランス良く、完成度が高いセットリストだと改めて感じた。

会場もメンバーも十分にあたたまってきた中盤からはチューニングを半音下げ、新曲を3曲立て続けに披露した。ライブの2日前にリリースされたばかりの「きかいにおまかせ」は、ポップでキャッチーなメロディの中にも転調や歪みがあって、日常で無理して藻掻いて疲れ切った心に共感してくれているような感覚がある。なんとこの曲、やよい軒にあるご飯盛りマシン(調べたところ”ごはんおかわりロボ”が正式名称らしい)に着想を得て制作されたとのことだ。歌い終わると、ヤコブが”リリックビデオのYouTubeにかかれた『限界サラリーマンワイ、歌詞が刺さりすぎて涙』というコメントが最高だった。やよい軒で一緒に飯食いたい。”とつぶやき、観客の笑いを誘った。続く、「部会」という曲もサークル時代のエピソードから作ったと語られた。ヤコブ自身も”だいたい曲の中で人生が完結できる、エピ(エピソード)を練り込んでいる”と言っていたが、この日常や自分自身の経験を、きちんと昇華して創作しているからこそ、きれいごとだけじゃない刺さる歌になっているのだ。

シンプルながらも力強い岡本のドラムとヤコブのギターカッティングから始まる「おはよう」から美しいつながりでの「ぜんまいじかけ」を経て、13曲目の「それだけ」~16曲目「夜」は、またしてもライブアルバム『IN TO THE DOOM』同様であった。ちょうどLP版が数日後に発売されるタイミングでもあり、もしかしたら意識されたセットリストだったのかも知れないし、違うかも知れない。私も物販でお買い上げしてしまった。

ライブの終盤は、アップテンポな曲でさらにメンバーの演奏にも熱が入り、「NFP」の<ハロー ハロー ハロー>や<パワー パワー パワー>、「p.u.n.k」の<p.u.n.k>などメンバーに負けない熱量で観客のシンガロングが巻き起こった。本編ラストの「オープンカー」は、リズミカルにベースを弾きながら振り絞るようにして歌う悠平、圧倒的なギタープレイでメロディをかき鳴らすヤコブ、ステージ中央で高いジャンプや軽快なステップを踏む谷江、パワフルなドラミングと気合の入った表情の岡本、音に合わせて自由に揺れ、手を挙げ、歌う観客、その全ての光景が最高にロックで美しかった。

アンコール待ちのフロアで面白いことがあった。最近は手拍子でアンコールを求めるのが一般的だが、誰かが”アンコール!アンコール!”と昔のスタイルでのコールを始めたのだ。それに多くの観客がのっかっていく雰囲気に、”なんだか面白いからのっかってみよう”という優しさと”家主ならおもしろがってくれそう”という不思議な安心感の後押しを感じてハッピーな気持ちになった。

案の定、再登場するなり”古風なアンコールありがとうございます”と笑顔で肯定し、そのネタで話を引っ張る距離感の近さが家主らしい。アンコールは「陽気者」「近づく」の2曲を、全てを出し切るような歌と演奏で叩きつけ、幕を下ろした。

家主のライブ後にふと浮かんだのは、”ただ良い音楽がそこにあれば、それだけで間違いなく良い夜になる。”というシンプルだが重要なこと。彼らのライブは、日々に忙殺され”DOOM”になってしまい、大切なことを忘れがちな私に、それを取り戻させてくれる。ツアー初日にして、こんなにも老若男女の観客を沸かせた家主の今後が楽しみでならない。


セットリスト
01.Cheater
02.茗荷谷
03.たんぽぽ
04.家主のテーマ
05.生活の礎
06.夏の道路端
07.路地
08.きかいにおまかせ
09.部会
10.(新曲)
11.おはよう
12.ぜんまいじかけ
13.それだけ
14.マイグラント
15.カッタリー
16.夜
17.カメラ
18.お湯の中にナイフ
19.NFP
20.p.u.n.k
21.にちおわ
22オープンカー
En1.陽気者
En2.近づく

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