
『マツクランジャタイ~あぁ再演続編だぞぅ~』感想|名曲とともに表現される人の生
「マツクランジャタイ」を観てから、東京事変の“閃光少女”が頭から離れない。
この曲が流れたとあるシーンがあまりにも美しく、深く心に残っている。
マツクランジャタイとは
マツクランジャタイとは、芸人のマツモトクラブとランジャタイのライブの名称である。
初めて開催されたのは2014年。2023年に突如、長編の演劇スタイルで上演され、SNSで大きな話題となった。2024年に再演、そして今回の再々演・続編と続いている。
出演はマツモトクラブとランジャタイに加え、あぁ~しらき、しゃばぞう、そして今回から、三福エンターテイメント、もじゃ、カントリーズ福田が新たに加わった。
2024年の再演では、ランジャタイ2人のエッセイ本から複数のエピソードと、「木綿のハンカチーフ」という演目が上演された。
その内容が切なくもとても美しい物語で、感動した私は今回のチケットも迷わず購入した。結果、今回も大満足の内容だった。
マツクランジャタイ~あぁ再演続編だぞぅ~ 感想
私が観劇したのは、5月3日(土)の夜公演。
演目は、マツモトクラブがR-1で披露したコント「日本語教室」と、前回も上演された「木綿のハンカチーフ」の再演、そしてその続編となる新たな物語だった。
「木綿のハンカチーフ」は、田舎から東京へ就職する男性マツモト(マツモトクラブ)と、幼なじみの女性サチコ(伊藤幸司)が別れを惜しむ場面から始まる。名曲“木綿のハンカチーフ”の歌詞に沿ったストーリーで、恋人同士だった2人は次第にすれ違っていく。一方、マツモトは東京で出会ったシンガー・アカネ(国崎和也)に惹かれていき──。というのが主なあらすじだ。
芸人による舞台なだけあって、笑えるポイントがいくつもある。だが、物語全体は哀愁に満ちていて、昭和のがむしゃら感、携帯もない時代の遠距離恋愛のもどかしさ、頑張れば頑張るほどすれ違う人の心……。観ていて胸がきゅっと締め付けられる場面がいくつもあった。
まさか芸人がこんなにも切ない舞台をするなんて。思わずそんな感想を抱いてしまうが、酸いも甘いも経験してきた彼らだからこそ、醸し出せる空気感があったように思う。
冒頭でも少し触れたが、ランジャタイ国崎が演じるアカネが、東京事変の“閃光少女”を歌うシーンがある。病を抱えたアカネが、手に持った花を振りまきながら歌うその姿は、とても美しく、強く印象に残っている。歌詞と相まって、一瞬の輝きに命をかける人間の美しさが見事に体現されていて、国崎の表現力にはただただ唸らされた。
マツモトクラブの演技力も流石だった。途中、何度も客席に降りて走っていたのは面白かった。
登場人物たちは、それぞれどこか他人事には思えない親しみや魅力があり、そんな彼らと自分を重ね合わせながら観ている人も多かったと思う。そんな彼らが幸せなエンディングを迎えたことは、観客にも希望を与えるいい締めくくりだったと思う。
後から知ったことだが、昼公演と夜公演ではラストシーンが異なるという。事前にそれを知っていれば複数公演観に行ったかもしれないが、この日この時間の物語に出会えたことも何かの縁だと思い、大切な思い出にしようと思う。
公演は5月3日から5日までの短期間だったが、こんなにも素晴らしい舞台がもう観られないのはあまりにも寂しい。もっと多くの人に観てほしいし、老若男女問わず受け入れられる内容だと思う。
“木綿のハンカチーフ”と“閃光少女”を聴きながら、またいつかマツクランジャタイが上演される日を、心から楽しみに待ちたい。
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