
Official髭男dism@日産スタジアム ライブレポート
「一緒に人生の曲がり角を曲がってくれてありがとう」
5月31日の神奈川・日産スタジアムで、藤原聡(Vo/Pf)は小笹大輔(Gt)、楢﨑誠(B/Sax)、松浦匡希(Dr)に向けてその言葉を贈った。直後に歌われたのは「Chessboard」。〈美しい緑色 こちらには見えているよ〉* の歌詞にあわせて、客席一帯が緑色の光に包まれる。
約7万人が作り出す絶景。4人が一緒に人生の曲がり角を曲がらなかったら、見られなかった景色だ。
4公演で約25万人を動員した、Official髭男dismの初のスタジアムツアー『OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025』。今や国民的バンドとなった彼らの歩みを、音楽とともに辿るような時間だった。
オープニング映像は、メンバーがバックステージを歩く様子をリアルタイムで追うもの。スタッフとハイタッチをしながらステージへと向かう4人の姿が、実際に観客の目の前に現れたところで大きな歓声があがった。1曲目は「Same Blue」。開演前には小雨がぱらついていたが、今はすっかり止んでいる。青空を突き抜けていくような爽快なサウンドが、ライブの始まりを高らかに告げていた。
映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の主題歌「Universe」や、TVアニメ『SPY×FAMILY』第1クールオープニング主題歌「ミックスナッツ」と、バンドの名前を広めてきた名曲の数々が、サポートのホーンセクションやコーラス隊を交えたきらびやかなアンサンブルで届けられる。
太陽が沈み始めた頃、「似合うんじゃないかな」と藤原が呟いて始まったのは「Pretender」。感傷的なメロディが夕暮れの空と溶け合い、ドラマチックな空間を生み出す。そんな野外ライブならではの魅力を活かしながら、この日のライブは進行していった。
「イエスタデイ」ではステージ前の噴水が美しく揺れ、「FIRE GROUND」では激しく炎が上がる。大掛かりな演出の数々が、オーディエンスの熱気をどんどん高めていった。
再び噴水が踊るように吹きあがった「ブラザーズ」、スカアレンジの「ノーダウト」で会場をさらに盛り上げ、「Cry Baby」「ホワイトノイズ」とTVアニメ『東京リベンジャーズ』のオープニング主題歌を続けたのちに「宿命」へ。そこから披露された「TATTOO」では、1台の車が走っていくアニメーション映像がスクリーンに映し出されていた。道沿いには、彼らが今までにライブを行ってきた会場名も見られる。ここ日産スタジアムに辿り着くまでの歴史が描かれていた。
当時の最新曲「50%」で本編を締めくくり、アンコールでは1曲目に「I LOVE…」を披露。
続く「異端なスター」は、彼らが活動初期から演奏し続けてきた楽曲だ。「この歌を日産スタジアムに連れてきてくれてありがとう」――藤原がそう告げ、島根のライブハウスの頃から大切にしてきた楽曲を7万人の前で歌い上げる。
観客のシンガロングやクラップも曲を彩った「SOULSOUP」、「Stand By You」で、ライブは大団円。これまでの歩みをスタジアムの地に刻み、バンドの旅路はこれからも続いていく。2015年のインディーズデビューから10年、Official髭男dismは多くの人に愛されるバンドに育った。今回のスタジアムツアーが、それをたしかに証明していた。
* Official髭男dism 「Chessboard」(作詞:藤原聡)より歌詞を引用。
【この記事を読んだ方にオススメ】
2023.10.05
Official髭男dism「Chessboard」レビュー|ルールも役もない盤上で
“人生については誰もがアマチュアなんだよ” これは伊坂幸太郎の『ラッシュライフ』に登場する、私の大好きな一文である。(余談だが、私は発言主の黒澤というキャラクターがとても好きだ)誰もが人生1回目。経験者はいないのだから、どうすれば上手く生きられるかなんて誰も分からないのである。 Official...
