ザ・リーサルウェポンズ『E.P.ウソつかない』ライブレポート
ザ・リーサルウェポンズは、サイボーグジョー(Vo)とアイキッド(Gt)から成る音楽ユニットだ。2019年活動開始。アイキッドは発明家で、サイボーグジョーは彼がつくったサイボーグである──と、設定を読むだけでわかる通り、言葉を選ばず言えば“変な人たち”なのだが、彼らのライブがとても面白い。
私が初めてザ・リーサルウェポンズを生で見たのは、2022年9月に中野サンプラザで行われたワンマンライブだった。当時、会場の一体感と予測不可能なエンターテインメントショーに釘付けになったのを覚えている。ただ、この日残念だったのだが、コロナ禍で観客の声出しが制限されていたことだ。だからこそ、声出しが解禁されたらどんなに凄いことになるんだろうと思った。
2023年7月5日~6日、Zepp Shinjukuにてワンマンライブ『E.P.ウソつかない』が開催された。ザ・リーサルウェポンズにとっては、3年と43日ぶりの声出し解禁ライブだという。公演2日目の7月6日、BANBANBAN・鮫島一六三による開演前の影アナでは“完全発声解放宣言”が告げられた。「俺たちこれから、密になってもいいですかー!?」という熱い掛け声に、フロアのポンザー(ファンの愛称)たちは歓声や、両手の親指と人差し指同士をくっつけてつくる“ポンズポーズ”で応える。すでに盛り上がる準備は十分だ。
インスト曲「20001年宇宙の旅」が流れると同時に幕が開き、キーボードを奏でるアイキッドの姿が現れた。スクリーンには宇宙空間を思わせる映像が映し出され、ステージ背後にはホッピーの瓶ケースが置かれている。続けてサイボーグジョーが登場し、ライブはオープニング定番の「80年代アクションスター」でスタート。イントロから観客たちによる大音量の“アニキコール”が響きわたった。ちなみに、コロナ禍でのライブでは観客の声を模した音声がスピーカーから流れていたのだが、やはり本物は違う。とにかく、迫力がすごい。
スクリーンには楽曲の歌詞が映し出されており、合いの手部分は赤字で表示されていた。これも彼らのライブでは定番の演出で、曲を知らなくても盛り上がるタイミングが一目で分かるようになっている。続く「ポンズのテーマ」では、アイキッドがジェットガンを両手に持ってスモークを発射。フロアでは〈ザ・リーサルウェポンズ〉の歌詞にあわせて“ポンズポーズ”があふれ、2曲目にして会場はお祭り状態だ。
ザ・リーサルウェポンズの楽曲は作詞・作曲を務めるアイキッドの嗜好を反映しているそうで、80〜90年代のカルチャーを元ネタにしたものが多い。そのため、客層は40代ぐらいの大人が目立ち、なかには子どもを連れて訪れている人もいる。MCでは、それに気づいた2人が「子どもがいるよね?ありがとう!」(サイボーグジョー)「力が尽きたら(演奏を)代わってもらいましょうかね」(アイキッド)と言葉を交わす場面も見られた。
続く「東海道中膝栗毛」では、温かな三三七拍子が会場を満たす。Zepp Shinjukuにはフロア横にもLEDビジョンが設置されているが、「東海道中膝栗毛」では浮世絵、その後の「半額タイムセール」では半額シールが映し出されるなど、小さな遊び心も忘れない。
中盤では、9月20日発売のメジャー2ndアルバムに収録予定の「ミッションインポッシブル」も披露された。ここまでステージを縦横無尽に駆け回りながら熱い歌声を届けたサイボーグジョーは、歌い終えた後に思わず「疲れた…」と一言。「なんでこの曲つくったの?」(サイボーグジョー)「事務所がやるって言ったから」(アイキッド)「完全にビジネスソングだよね」(サイボーグジョー)「私はそうは思ってないけどね(笑)」(アイキッド)と、制作裏話(?)を語る2人の様子に、会場は和やかなムードに包まれた。
「シェイキン月給日」では〈うまいstick/ねだってごっつぁんです〉の歌詞にちなんで、アイキッドがフロアへうまい棒を投げる演出も。セガ社の「メガドライブミニ2」のために書き下ろされた楽曲「夏の日のメガドライブ」では、どこか懐かしさを感じるサウンドが響き、〈SEGA〉のシンガロングも起こる。その様子を見て、演奏後にアイキッドも「会場がみんな〈SEGA〉だって!」と喜びを見せた。アイキッドもサイボーグジョーもポンザーたちも、今日のように制限なく自由にライブができる日を、どんなに待ち望んでいたことだろう。
セガ繋がりでMCはゲームの話題になり、「ストリートファイターII」のあるあるネタを歌った「昇龍拳が出ない」へ。フロアにはカラフルな巨大バルーンが現れ、再び熱気はヒートアップ。勢いそのままに「サイボーグメカニンジャ」「ホッピーでハッピー」「さよならロックスター」と畳み掛け、スモークの立ち込めたステージで「雨あがる」を披露し本編を締めくくった。
会場に再びアニキコールが沸き起こる中、ステージに戻った2人は「都立家政のブックマート」を披露。いよいよ次でラスト1曲となったところで、一緒にステージに上がってくれる人をフロアから15人募るという。この観客をステージに上げる演出は、コロナ前の彼らのライブでは常に行われていたもの。今回、声出しとともに3年43日ぶりの解禁となった。先着でステージに上がった15人と一緒に届けられたのは、ライブ定番曲「きみはマザーファッカー」。終盤には銀テープが放たれ、影アナを務めた鮫島がステージ上の観客に順番にマイクを向けていく。もちろんフロアでもハンズアップや掛け声が見られ、終始大盛り上がりでライブは幕を閉じた。
「ポンザーがいなかったらこのバンドできないから、本当にありがとうー!」と叫ぶサイボーグジョー。「やっとボーカルがそろった」と語るアイキッド。2人の言葉通り、ザ・リーサルウェポンズのライブは、観客の声が加わってこそ完成形となるのだろう。欠けていたピースがそろった今回のライブは、想像以上の迫力とエンターテインメント性に満ちていた。次は一体どんな面白いことをしてくれるのだろうか。コロナ禍を乗り越えた彼らの躍進がますます楽しみだ。
■2023.7.6 ザ・リーサルウェポンズ『E.P.ウソつかない』@Zepp Shinjuku セットリスト
1. 80年代アクションスター
2. ポンズのテーマ
3. 東海道中膝栗毛
4. 押すだけDJ
5. 半額タイムセール
6. マハラジャナイト
7. Super Cub is No. 1
8. ミッションインポッシブル
9. 熱血ティーチャー
10. シェイキン月給日
11. 夏の日のメガドライブ
12. 昇龍拳が出ない
13. サイボーグメカニンジャ
14. ホッピーでハッピー
15. さよならロックスター
16. 雨あがる
En1. 都立家政のブックマート
En2. キミはマザーファッカー