
大熱狂の『FACT IS LIFE TOUR 2025』東京、大阪の3公演をレポート
2024年12月、9年前に解散したバンドFACTが復活した。
復活の場でVo.Hiroから「せっかく練習したしもう少しやろうかな」という言葉があり、『FACT IS LIFE TOUR 2025』の開催が発表された。その瞬間は心の底から喜んだが、実際に発表された内容は、柏、水戸、東京、大阪の4箇所6公演のみ。「……少なすぎる!!」と叫びたい気持ちもあったが、一度解散したバンドが再びステージに立つという奇跡を有難く噛み締めなければいけない。
すでに、10/5のFACT主催のフェス『ROCK-O-RAMA THE END』をもって再解散することが発表されている。FACT再結成後のツアーは、正真正銘この一本のみとなった。
当然ながらチケットは争奪戦で、先行に何度応募しても届くのは落選メールばかり。筆者は、執念の一般発売と、幸運にもリセールチケットを買うことができ、東京2公演、大阪1公演に行くことができた。
本稿では、それぞれのライブで印象に残ったシーンを振り返っていこうと思う。
9/14『FACT IS LIFE TOUR』東京公演1日目@豊洲PIT
東京公演は3,000人以上入る豊洲PITで2日間行われた。その初日となる9/14(日)、パンパンに埋め尽くされた会場で、オーディエンスの大歓声を浴びながらステージに登場したFACTが鳴らした一曲目は“New Element”だ。
同じ『Witness』の収録曲“Drag”が続き、「速い曲やります」という宣言から“wait”へ。豊洲PITという大箱にも関わらず、ステージダイブをするオーディエンスが続出。序盤から大熱狂の盛り上がりだ。
MCでHiroが「ツアーも残すところあと4公演」と告げると、フロアからは「すくねぇぞ!!」の声が飛び交う。
それに対しHiroは「これは仲間たちに俺たちを葬ってもらうツアー。そして、あなたたちが俺たちを葬ってください」と投げかけた。
Gt.Kazukiは、「お前ら、ライブやってやってんだから感謝しろよ」と笑いを誘う。バンドとして再びの「終わり」が決まっている彼らだが、湿っぽさは微塵もない。MCは和やかに、演奏はただひたすらに熱く畳み掛ける。
メンバーが「この感じ懐かしいな」と話していたように、この「MCとライブのギャップ」もFACTのライブだったな、と当時の記憶が蘇った。
「昔の曲やります」からの“Pressure”、“We Do It In Our Way All The Way”はめちゃくちゃ熱かった。10年前でも滅多に聴けなかった曲に、彼らなりのサービス精神と、FACTというバンドの歴史を振り返ろうという姿勢を感じた。
Kazukiからは「2年ぐらい前かな、皆でリハ入って。“tonight”やった時、あれが1番熱かったね。皆ベロベロに酔っ払ってさ」と、再結成に至るまでの裏話も語られた。
ラストの“a fact of life”では、人が乗り切らないほどのクラウドサーフとステージダイブが起こり、東京初日は大熱狂のうちに幕を閉じた。
9/15『FACT IS LIFE TOUR』東京公演2日目@豊洲PIT
東京公演2日目。この日はFACTの代表曲“slip of the lip”から始まった。いきなりの名曲披露にオーディエンスは沸き立ち、冒頭から一気に会場内の温度が上がる。
Gt.Adamの「初期の頃から知ってるやつどんくらいいんの?すっごい古い曲やります」という予告から始まったのは“start from here”。さらにそこから、“Deviation”、“Manic”と続き、大きな歓声がフロアを包んだ。
MCでは、“start from here”は最初Ba.Tomohiroも歌っていたことが明かされる。
前日もそうだったが、MC中のメンバーの喋りや、オーディエンスから飛ぶガヤとのやり取りなど、いい意味で緩く、しんみりした雰囲気は一切ない。
しかし終盤、“sunset”でHiroが「たくさんある音楽の中から俺たちを選んでくれてありがとう」と感謝の言葉を語ると、涙を拭うオーディエンスの姿も。
“sunset”のアウトロでは「FACTってバンドがいたことを、みんなに伝えていってください」とHiroが呼びかけた。
FACTが再びいなくなってしまうことは、悲しい。だが、こんなにもかっこいいバンドがいたことを後世に伝えられるのは、同じ時代を生きたファンだからこそできることなのだ。私がこの記事を書こうと思ったのも、この言葉があったからだ。
悲しいだけじゃない、未来への希望もわずかに感じさせる東京公演2日目だった。
9/19『FACT IS LIFE TOUR』大阪公演2日目@GORILLA HALL
ツアー最終日となる9/19の大阪公演。FACTがライブハウスで行う最後のライブでもある。
セットリストは東京公演2日目に近い構成。しかし、豊洲PITよりもキャパが少なくフロアに柵がないGORILLA HALLは自由度が高く、「FACTのライブらしさ」を存分に楽しむことができた。筆者にとっても、この日のライブが最も楽しく感じられた。
この日は東京公演とは打って変わって、冒頭からHiroが「泣きそうだ」と漏らす場面も。
なら再解散なんてわざわざしなくてもいいのに、とも思ってしまうが、現在アメリカで生活しているAdamは有給を使って来日しており、「有給があと5時間しかない」と明かして笑いを誘っていた。
すでに各メンバーにはそれぞれの生活や音楽活動がある。いつまでも過去に縛られてはいけないのも事実だ。
その一方でAdamは「人生の半分以上こいつらといるけど、ほんと最高だよ。愛してる」と口にしていた。メンバーにとってこのFACTというバンドは、何ものにも代えがたい存在なのだ。
個人的にこの日一番グッときたのは“FOSS”での一幕。FACTのライブ恒例、ダッチワイフがフロアに投げ込まれると、ラスサビ前にそのダッチワイフ4体がステージに向かって並び、壁を作っていたのだ。
オーディエンスのノリの良さと馬鹿馬鹿しさに大笑いしつつ、こんなにも楽しいFACTのライブハウスが今日で最後だと思うと、込み上げるものがあった。
“sunset”のアウトロではHiroが
「ああすれば良かった、こうすれば良かったとかあるかもしれない。けど、俺たちは一切後悔してない。だから、みんなもああすれば良かった、って後悔せずに生きてください」
「今日が最後のやつ、楽しかったか?幕張来るやつ、最後きれいに俺たちを葬ってください」
と投げかけた。
再解散を実感させるライブであったが、それ以上に心の底から楽しめた、とても充実感のあるライブだった。
▼FACT一色のGORILLA HALL


10年前に終わることを選択したバンドが、時を経てまた素晴らしい時間を与えてくれた。それだけで感謝の気持ちでいっぱいだ。
次は10/5、幕張メッセで行われる『ROCK-O-RAMA THE END』。FACTの最後を、しっかり見届けたい。
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