『ROCK-O-RAMA THE END』の看板

10年前の気持ちに決着をつけた、FACTラストライブ『ROCK-O-RAMA THE END』

昨年12月に復活を果たしたバンド・FACTが主催するフェス『ROCK-O-RAMA THE END』が、2025年10月5日(日)幕張メッセにて開催された。
古くからFACTと親交があり、ともにシーンを盛り上げてきたバンドやアート、ファッションブランドが集結し、音楽だけでなくカルチャーを体現するフェスとなった。

そして、この日をもってFACTは「再解散」することが発表されていた。そのラストライブを見届けようと、多くの人が朝から会場へ駆けつけていた。

本記事では、FACTのラストライブの模様をレポートする。

FACTラストライブレポート

昼から多くのバンドが出演し、会場を盛り上げ、FACTラストライブへの道を繋いだ『ROCK-O-RAMA THE END』。

満を持して登場したFACTは、Vo.Hiroの「ラストだ!」という一声でスタート。開幕の“slip of the lip”から会場は大盛り上がり。大量のクラウドサーフが発生する。
今日が本当の「最後」なのだから、一瞬たりとも無駄にはできない。そんなオーディエンスの気迫が感じられた。

数曲披露した後、Hiroが「これを言うのも最後か。FACTって言います!」と話すと、会場からは大きな歓声が。感慨深そうに語るHiroと、いつもの軽妙なノリで場を和ませるGt.Kazuki。ラストライブでも「FACTらしさ」は健在だった。

この日は、『FACT IS LIFE TOUR』で披露した曲を全て詰め合わせたようなセットリスト。初期の曲から10年前の解散直前に発表した曲までを網羅し、FACTというバンドの「今」をオーディエンスにぶつけてくる。
それを受け止め、返そうと、オーディエンスも全力で応える。幕張メッセという巨大な空間でありながらも、ライブハウスのような大きな熱の渦が巻き起こっていた。

筆者が特に印象に残ったのは、終盤に披露された曲“sunset”だ。曲前のMCでHiroは、10年前のとある本音を語った。

「ちょっとだけ本音を言うと、10年前解散するって決めて、そこから1年間ツアーをやって、その間人生で一番辛い時期だった」「このツアーをやって、意味なんかねぇよって言ったけど、ちょっとだけ本音を言うと、10年前の辛かった1年間を取り戻せた」

10年前の解散後、メンバーはそれぞれ新たな音楽活動を始め、FACTについて語ることはほとんどなかった。だから、当時の彼らの気持ちはファンですら知ることができなかった。
自分たちで選んだ「解散」という決断であったが、Hiroはとても辛かったということ。それが彼の心の中にはずっと残っていたのだろう。
そしてこの1年間の再結成で、その思い出が全てではなくとも払拭された。その事実が、この1年がとても価値のあるものだったことの証明だと思う。

“sunset”のアウトロでは、再びHiroがバンドの想いを語った。
「ただの音楽好きが、兄弟が、親友が、Kazukiが“やろう”って言ってバンド始めて。初めて行った千葉LOOKでTomohiroと出会って、3人が俺に歌ってほしいって言って。えっくんと出会って、Adamと出会って……」
「俺たちはここで終わるけど、FACTってバンドが俺の誇りです。これからもFACTって音楽を繋いでいってください」

その言葉に応えるように、会場からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。

そして、「全員……かかってこい!」というHiroの煽りとともに放たれた最後の曲、“a fact of life”。

〈Thanks for the memory that doesn’t fade in my heart.(この心には今もなお色褪せない想い出)〉1

このフレーズを、FACTに向けるように全員が大きな声で歌う。FACTの代表曲にして、揺るぎない最強の一曲。
最後にふさわしい熱狂の中、約1時間半・24曲にわたるFACTのラストライブは幕を閉じた。

FACTが残したもの

10年前の解散ライブでは、終演後に涙を流すオーディエンスが多く、悲しさが会場を包んでいた。だが今回は違った。多くの人が笑顔で彼らを送り出していた。
Hiroが「10年前の辛かった1年間を取り戻せた」と言ったように、ファンである私たちもまた、10年前の気持ちに決着をつけることができたのだと思う。
10年という時を経て、この再結成があって、改めて「FACTの解散」に向き合うことができた。この1年間の再結成は、とても意味のあるものだったのだと思う。

そしてもう一つ、筆者がこの日強く感じたのは、FACTというバンドが残した功績の大きさだ。
2014年、同じく幕張メッセで開催された『ROCK-O-RAMA』は、お世辞にも盛況とは言い難い客入りだった。(客としては、当時アンダーグラウンドで活躍するバンドを幕張メッセで見れることがとても嬉しく、今でも自分の中で1、2位を争うぐらい楽しかったライブだ。)

だが今回の『ROCK-O-RAMA THE END』では、10年前に出演していた多くのバンドが再び集い、どのステージも大勢のオーディエンスで埋め尽くされていた。
FACTの想いとカルチャーを引き継いだバンドたち、そしてファンが、シーンを大きくしていった。その結果がこの光景なのだと実感した。
FACTというバンドが与えた影響は大きかった。その事実に胸が熱くなった。

FACTはこの日をもって終わりを迎えた。
だが、彼らが残したものと音楽は、これからも生き続けていく。

色褪せない想い出をありがとう、FACT。

『ROCK-O-RAMA THE END』終演後のゲート

1 FACT “a fact of life”(作詞:FACT)より歌詞を引用。

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