サタニックパーティー

SATANIC PARTY2023ライブレポート|Crystal Lake、サスフォー、HIKAGE

10月最後の日曜日。
ハロウィンの混乱を防ぐために警察によって規制がかけられていた渋谷で、自由に、開放的に、カルチャーが躍動する場があった。SATANIC PARTYだ。
Spotify O-EASTとduo MUSIC EXCHANGEの2会場を使って開催された本イベントには、パンクロック・ラウドロックのアーティストら18組が出演した。

その中から、HIKAGE、Suspended 4th、Crystal Lakeのライブの様子を記す。

HIKAGE ライブレポート

「アーユーレディー渋谷!!」のスクリームとともに幕開けしたHIKAGEのライブ。私がHIKAGEのライブを観るのは3回目だが、音や振舞いから感じられるパッションが非常に魅力的で、今気になっているバンドの一つだ。この日もかなり期待してライブを観たわけだが、その期待を裏切らない熱いライブをみせてくれた。

一曲目は疾走感溢れるナンバー、“ISOLATION”。人気曲であることから、フロアは一気に沸きたち、サビのコーラスでは多くの拳が上がる。そこにさらに燃料を投下するかのごとく、C-GATEのボーカル・NaShunがフィーチャリングで参加し、一曲目からガンガン飛ばしまくる。

そのまま勢いを落とすことなく、2曲目・3曲目もボーカルのGenが客に身を預けながら渾身のスクリームを響かせ、地鳴りのようにドラムとベースが音を刻み、歪んだギターで観客を躍らせる。ライブが進むごとにフロアに降りるキッズが増えていき、観客のうねりはどんどん大きくなる。

MCではボーカルのGenが、SATANICにずっと出たかったこと、そのために運営に連絡をし続けていたことを明かす。「ずっと連絡してたらこうして出れたぜ!」と、夢を掴みにいく姿勢に痺れたファンも多いと思う。

最後は「中指立てろ!」の言葉とともに最新EPから“SiCK”を披露。赤い照明やギターのサイレンのような音、Genの全身を使った叫びで、爆発するかのような怒りが強く表現されていた。

このまま燃え尽きんとばかりの熱いライブを、これでもかと感じさせてくれた30分だった。

Suspended 4th ライブレポート

この日EASTで19時から出番だったSuspended 4th。
しかし、会場に向かう途中で事故渋滞に巻き込まれ、急遽Dizzy Sunfistと順番を入れ替えて20時過ぎからの出番となった。

ステージに登場するなり、メンバーは手を合わせてごめんなさいのポーズ。
だが、すぐさまそんな空気を消し飛ばすかのように力強いベースのスラップが響く。一曲目はサスフォーの世界へと観客を誘うのにぴったりな曲、“97.9hz”だ。各々の演奏技術の高さを見せつつ、サビではしっかりと歌って踊れるのがサスフォーの魅力であるが、この曲はサビの浮遊感が特に心地いい。

前方がいい感じに温まったところで、鋭いギターのカッティングで“ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン”に突入。〈今しかねえ 会心のチョーキングを〉1を受けてGt.Sawadaがセンターでギターソロをかき鳴らす。それとともにフロアの熱がぐっと上がったのが分かった。彼らの音に惹かれて、次第に前方に人が増えていく。

MCでは、名古屋から車で来たために遅れてしまったこと、しかしこのSATANIC PARTYには名古屋のバンドが複数出ていて名古屋バイブスを感じるとVo.のWashiyamaが嬉しそうに話す。地元・名古屋でのストリートライブで腕を磨き、DIY精神や自らのルーツを大切にするからこそ生まれた独自性でシーンを駆け上っているサスフォー。その様子をリアルタイムで観れるのは貴重だなと思ったりもした。

ラストはBa.Fukudaの長い高速スラップで幕を開ける代表曲“ストラトキャスター・シーサイド”。全編を通して各パートが主役と言わんばかりのテクニックの応酬をステージ上で繰り広げ、それに引っ張られるかのようにフロアも一段と拳を上げて盛り上がりを見せる。最後のサビに入る直前、Vo.Washiyamaが「速くするか」と不敵な笑みを浮かべる。その言葉を受けてDr.Tairaがギアを上げ、最後は高速バージョンで演奏し完走。そのパフォーマンスに観客から惜しみない拍手が送られた。

Crystal Lake ライブレポート

SATANIC PARTYのイベントを締めくくるのはCrystal Lakeだ。

民謡のようでありホラーさも兼ね備えた妖しいSEがEASTに響き渡る。ステージの後方にはいくつもの真っ直ぐな光が落ち、まるで雲の上から神が降臨するかのような神々しい演出にフロアが沸き立つ。

メンバーがステージに登場し、一曲目に投入されたのは“Mephisto”だ。シングルのカップリング曲を一曲目に持ってくるなんてマニアックすぎないかと一瞬思ったが、杞憂だった。観客が曲を知っているか知っていないかは関係ない。Crystal Lakeが発する圧倒的な熱量とパワーで観客の頭のネジを外す、そんな気概がビシビシとパフォーマンスから感じられた。

そこから爆発力のある“Six Feet Under”に突入し、フロアには大きなサークルピットが出現。ステージ上のメンバーから発せられる音塊と観客のぶつかり合い、そんなイメージがぴったり合うような応酬が繰り広げられる。

ボーカルがJohnになってからのCrystal Lakeを観るのは3回目だ。Johnはあまりステージ上で動かない印象があったが、この日はステージを駆け回り広く使っていた。歌唱にも以前より伸びやかさが加わり、この数か月のあいだに多くのライブを経験し進化していることがうかがえる。
その証拠に、John加入後に発表された曲“Rebirth”では、強力な楽器隊をバックにフロントマンとしての存在感を遺憾なく発揮していた。

MCではGt.のYDがSATANIC PARTYに出る理由を語る。YDは、以前HEY-SMITHの猪狩のMCで心に残った言葉があり、それを今感じていると前置きした上でこう話した。
「俺はパンク、ハードコア、メタル、ラウドを一度も疑ったことがない。サタニックのチームを一度も疑ったことがない。だから俺たちは音楽を続けてるしSATANIC PARTYに出てる。パンクもハードコアも音楽だけじゃない、ユニティだ。互いにサポートし合っていこう」

この言葉を受けてフロアからは大きな拍手が起こる。Crystal Lakeに向けてだけじゃなく、このイベントを作り上げた人たちにも向けられた拍手だった。

最後は世界中で人気の高い“Apollo”を披露。会場全体で手を掲げシンガロングをして一つになり、このイベントのトリにふさわしい盛り上がりを見せたところでCrytal Lakeのステージは幕を閉じた。

2023.10.29 Crystal Lake@SATANIC PARTY2023セットリスト
1.Mephisto
2.Six Feet Under
3.Disobey
4.Denial/Rebirth
5.Watch Me Burn
6.Lost In Forever
7.Apollo

この日YDが語っていたように、STANIC PARTYはパンクロックやラウドロックといったカルチャーをフィーチャーし、それに賛同した人たちが集まったイベントだった。出演アーティストも訪れている客も若い人が多く、この場にいた人たちがまた一つのムーブメントを作っていくのだろう。終わった後は充足感だけでなく、未来が楽しみに思える、そんなイベントだった。


1Suspended 4th “ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン”(作詞:Kazuki Washiyama)より歌詞を引用。

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