sumika「Phoenix」レビュー|終わりを知らない音楽
「Phoenix」=不死鳥。強くて格好いいイメージがあるから、激しいロックナンバーかと思ったら全然違った。ああ、sumikaは今こんなに幸せな曲を作ってしまうのかと思った。
sumika「Phoenix」レビュー
5月14日に行われた『Ten to Ten to 10』を終えた後に製作した曲だという。『Ten to Ten to 10』はsumikaの結成10周年アニバーサリーライブであり、バンドとしての1つの区切りであった。
公開されたリリックビデオには片岡、荒井、小川のクレジット。前作の「Starting Over」の時には黒田の名前もあったから、作品としては今回が本格的に3人体制のスタートなのだと思う。
メンバーを失った悲しみを乗り越え、歩み続けること。まさに、何度でも蘇って朽ちることのない不死鳥の姿に重なる。
──とこれだけでも曲の解釈として成り立つのだが、もう少し続けたい。
「Phoenix」はsumikaらしいカラフルな楽曲ではあるが、例えば「Glitter」や「Shake & Shake」のような、弾ける明るさとは少し違うものがあるように感じている。
歌詞の〈呪われた朝〉や〈暗闇〉といった不穏な言葉のせいだろうか、サビ以外は音数が少ないからだろうか。個人的にはにぎやかな雰囲気の裏に、どこか切なさや哀愁が隠れているような気がしてならない。
リリース時のコメントの中で、片岡は夢で見たという五十音の話をしている。
「答えが難しいからこそ、一番最初に教わっていたのかもしれません」「うえを向く前にやるべきこと」。(※1)
五十音で私たちが最初に教わる2文字、“うえ”の前にあるのは“あい”である。「Phoenix」は“愛”の歌なのだ。
上を向く前に向き合うべき愛。そうなると、やはり黒田の存在を考えずにはいられなくなる。
もしかしたら、不死鳥=“4人のsumika”という意味だったのではないか。
もちろん、この作品に黒田のギターの音は含まれていない。しかし、私にはどうしても4人が楽しそうに演奏している姿が思い浮かんでしまう。
死んでも蘇り、永遠の時を生きる不死鳥。そこに姿はなくても、きっとsumikaは永遠に黒田を含めた4人組バンドだ。もし空の向こうで一緒に演奏を続けてくれているなら、とても素敵だし幸せなことだと思う。
先日、片岡の声の不調により、sumika Live Tour 2023『SING ALONG』の延期が発表された。
ツアー以外に決まっていたイベントは、荒井と小川での「sumika[roof session]」で出演するという。きっと悔しいと思う。それでも、最善の方法を模索し、バンドとしての歩みを止めない姿は本当に強くて格好いい。
そして彼らはまた必ず、「sumika」として元気にステージに戻ってきてくれるだろう。
何度でも蘇る鳥のように。
再びパレードが始まる日を、楽しみに待っています。