ELLEGARDEN_20221101終演後のステージ

ELLEGARDEN Lost Songs Tour 2022 ライブレポート

2022年11月1日(火)、Zepp KT YokohamaにてELLEGARDENのワンマンツアー「Lost Songs Tour 2022」初日公演を観た。細美武士(Gt/Vo)のブログに書かれているように、新しいアルバムを発表する前に、昔の曲をライブで披露するというコンセプトのライブは、一瞬であの頃にタイムトリップしたかのような懐かしさと、もう一度ここから新しい場所へ向かおうとしている、現在進行形のバンドとしてのELLEGARDENの勢いを感じた

”ELLEGARDENが千葉から東京にライブの拠点を移して、全国駆けずり回ってるうちにセトリになかなか入らなくなっていった超初期曲とか、知ってる人が少ないとか人気がないとかの理由であまりやらなくなっていったけど、メンバー個々人にとって当時大事だった曲とかを、何曲かずつセトリに入れて周りたい。そういう曲をやる機会は新作が出るともっと作りづらくなるものなので、ああ指輪歌いてえなあ、とか一時期はライブの締めは必ずナイフだったな、みたいな感覚にケリをつけときたい。”

https://www.takeshihosomi.com/blog/2022/09/ellegarden-lost-songs-tour-2022.html

この日は、コロナの影響で人数制限があり、スタンディングエリアは前方、真ん中、後方右、後方左の4つに分かれ、入場時にそれぞれのエリアのカラーのリストバンドを選ぶ形をとっていた。会場に入るとONE OK ROCKなどテンションの上がる曲が会場BGMとして流れていた。サウンドチェックのギターの音ですらウルっと来てしまった瞬間に、2018年8月のZOZOマリン以降、チケットが外れ続けていた自分が、どれほど今日という日を待っていたかを自覚した。

黒いTシャツに白いガムテープで「ユウイチ♡」と書かれた服装の男性が登場した。最初はキャップでよく顔が見えなかったが、数秒で気がついた。MONOEYESのドラム、一瀬正和だ。

明るく自己紹介をしながら、”つり具の上州屋さんで明日の釣りのためにおもりを買っていたら前説やってってLINEがきたの。さっき17:30くらいだよ。急いで家に帰って、一応ユウイチ(高田雄一(Ba))推しなので、このユウイチLOVEのTシャツを作ってきました。”と、この前説の依頼がとても急だったこと、そしてTシャツの説明をしてくれた。続けて、今日のZeppのルールとして歌唱やモッシュ・ダイブがNGで、マスクを着けたまま楽しんでほしいと観客へのお願いを上手に盛り上げながら投げかけた。その言葉に対して、オーディエンスも拍手で応える、素敵な空間だった。
少しずつ、声出し解禁されているライブも出始めていた時期だったのだが、”今日のルールはこうです!”と前説でしっかり提示してもらうことで、制限がある中でも、一体感を持って安心して楽しむことができたと、振り返ってみて改めて感じた。

会場の照明が落とされ、重たいSEが響きメンバーが入場する。
少し緊張感のあるSEから、ぱっと切り替えるように、はじけるような高橋宏貴(Dr)のドラムが鳴り「My Favorite Song」(作詞:細美武士)が始まった。Aメロから手拍子で観客も盛り上がっている。1曲目からこの曲なんて、ツアー名に込めた想いをダイレクトに感じてしまって、私は涙を止められなかった。
泣いてしまったら、視界がぼやけるから泣きたくないって思ってたけれど耐えられなかった。大好きな曲はずっと自分の中に響き続けるのだ。

 <My favorite songs My favorite TV shows are never ending
 My favorite books My favorite radio shows will never die
 They echo inside me>

歌い終わりに「横浜~!」と細美が叫び、間髪入れずに約束の歌「Supernova」に繋がる。復活ライブの一曲目だったこの歌、コロナじゃなけりゃダイバーが続出するこの歌、やっぱり特別だった。
生形真一(Gt)のコーラスにも感情が乗っていて、とくに語尾の音が強く発音されている感じがした。

続いて、何度も聴いてきた耳に残るイントロのギターですぐに「風の日」(作詞:細美武士)と分かって思わず飛び跳ねた。

 <こんな顔を見せるのは ほんとは好きじゃないけど
 僕だっていつも ピエロみたいに 笑えるわけじゃないから>

冒頭のこの歌詞が、ティーンの頃から非常に強がりだった自分の心に刺さって、いつも元気を出したいときに聴いてきた。それは、エルレが休止してからも、復活してからも変わらなかった。生形のギターソロの前に、細美が「生形、いってこいっ!」と強く煽って、そこからギターソロの歪ませ方が情熱的で、そのあとのアルペジオが繊細で美しくてそのギャップに魅了された。

この日最初のMC、”こんばんはELLEGARDENです!久しぶりだな、この満員の会場、初めてのZepp Yokohamaです。ELLEGARDEN再始動後初のワンマンツアー初日へようこそいらっしゃいました!”(細美)と満員の会場を喜ぶ非常にいい笑顔で、ちょっぴり下ネタも交えながら”モッシュもダイブもできないのはこのツアーがきっと最後で逆にレアだから楽しめ!”と状況をポジティブにとらえる言葉を放った。

高田のベースと高橋のドラムが合わさった、ものすごいパワーのあるイントロから「Fire Cracker」、「Space Sonic」「No.13」と勢いのある名曲が立て続けに披露され、ただひたすらに圧倒されるような展開が続いた。

”あれこれいつぶり?22年間やってない曲、新生児が大人になるくらいの年月だ。(ここで何年やってないのか?生形と細美がわちゃわちゃと確認するタイムがあった・・・)フェスとかはオラオラして唇の三人組とかに絶対負けないって感じでやってるけど、ワンマンだから、今日は俺たちの好きなようにやらせてもらうから。じゃあ聴いてください「指輪」”

細美が緩い感じのMCから最後にサラッと「指輪」って言い放つのは反則技だった。さすがに声出しを我慢していた観客からも、ついうっかり喜びの声が漏れていた。

「指輪」が生で聴ける日が来るなんて、夢みたいだ。
<指のサイズ9号で良かったっけ>のところ細美が音程アレンジして歌っていた。どれだけエモさを増幅させれれば気が済むのか。音が急に止まるところのメリハリとかも、音源もいいけどやはり生は最高に痺れるものがあった。

「A Thousand Smiles」から「Missing」では、「Missing」のイントロで”おおっ”という声がたくさん聴こえた。身体に染みつくくらい、聴き込んだイントロだからついみんな反応してしまうのだ。

このあと、個人的にこの日最も自分の心を打ったMCがあった。
”台湾の「Fire EX.」ってバンドが仲良くて、フジロック出た時に一緒にメシに行ったのね。その時に旧曲ツアーやるって言ったら、『当時の自分と出会っちゃってすげえ不思議な気持ちになるよ』って言われてわくわくしてた。指輪とか歌ったら、こんな気持ちなくしちまったな、変わったなとかジーンとくるのかなと思ったら、全然何も変わってないなって感じだった。みんなもそうなんじゃないかなって、俺たちのレコード聴いてきてくれた人なんて。悪く言えば成長していない。よく言えば何か大事なものが何かずっと分かっていてなくさなかったんじゃないかな。最近、人と人のたたき合いがすごいじゃん。俺はSNSを見ないし、やらないからわからないけれどそれですら感じる。来年、一緒にかましましょう。人の言うことばっかり気にして生きてる連中ばっかりじゃねえんだぞ、人の評価で自分の価値が変わらない人間がいるんだぞって日本中に思い知らしてやりましょう。

この今の世の中に戦いを挑むようなMCからの「Mountain Top」は本当にかっこよくて、やっぱりELLEGARDENは自分のヒーローだと思った。
もう惚れているけれど、もっと惚れる。底なしだ。
周りに軸を求めるのではなく、あくまで、自分の軸で人生を生きることの大切さを教えてくれる、自分にとって大事にしてきたものを肯定してくれる。

個人的には間奏、Cメロで手拍子するの好きだった。みんなで登山してる感じがしたから。

幾重にも音が重なる幻想的なエフェクトがたまらない「Salamander」、細美さんが”心の中で!”と煽って、`Pepperoni Quattro’の声が出せなくても楽しい「Pizza Man」とライブは後半戦も勢いが止まらなかった。13曲目の「Lonesome」は自分にとって、人生のテーマソングともいえる曲のため、2018年のZOZOマリンぶりの生演奏を聴いて、切なさが限界突破してしまった。そして「Sliding Door」で拍車をかけてきたため、冷静さを失い、大号泣し、珍しくライブ中の記憶が飛んでしまった。

“俺は本当に服のセンスがなくて、自分の買う服は笑われるんですよ。でも服とかどこで買ったか聞いてくれる奇特なセンス悪いファンがいて、よくこのネックレスを「どこで売っているんですか?」って聞いてくれるんです。これは売っていないんですよ、俺のカミさんが誕生日にプレゼントしてくれたもので、デザインが方位磁針。裏に”Best Travelers Award”って書いてあって世界で一番の旅人と表彰してくれたペンダントなんです。なんで方位磁針なのか、俺は頭が本当によくないけど、それくらい俺にもわかる。”ちゃんとどこまで行っても良いから帰ってきてね”というの、くれたんです。そりゃ人生も変わりますよっていう曲、聴いて。新曲です。”

細美のネックレスにまつわる素敵すぎるエピソードに、会場からはあたたかい拍手が巻き起こった。人生のパートナーってこういうことなんだろうな、と思いながら聴く「Strawberry Margarita」は格別で、甘くて切ないメロディに酔いながら、<I’m glad to finally find you>の歌詞がより沁みた。

ここからはもう畳みかけてくるような流れで、「 スターフィッシュ」「The Autumn Song」というキラーチューンが惜しみなく披露されていく。というか、自分にとってはエルレの曲はどの曲もキラーチューンなので、やはり冷静にレポートを書くことが難しい。
自分のこと、本当に特技もなく、ろくなやつじゃないって思うけど、ずっと好きなものを大切にできることだけが唯一誇れること。

“めちゃくちゃ楽しかったよ、ありがとうございました。12月21日アルバムが出ます。僕が何事もなければだけど。買ってくださいとは言わん。人生全部乗せすることはできた。それをお前らが気に入るかどうかはまた別の話。(中略)「あと2か月で50歳なのに何が「Strawberry Margarita」じゃ!ってかんじだけどさ。これが俺たちなんだからしょうがないなって気が付いて、いつまでがんばろうとかじゃないけど全然できちゃうから。さっきも言ったけど、これしか知らないんで。若者のみなさんにはぜひかっこいい歳の取り方をお見せして幕を落としてえなと。”

ついに、アルバムが出ると正式な発表が出て興奮が最高潮に達したところで、「ジターバグ」でラストスパート、会場のこぶしもより高く挙がった。私も隣の男性と腕が少し当たったりしながら、拳を挙げて飛び跳ねた。コロナの世界になって初めて、隣の人の汗をダイレクトに感じた。「虹」の照明が虹色で、もうこれは幻なのか、夢なのかと思った。けど確かに現実で。生形のギターソロが、良い具合の擦れた音もあって良かった。”次あうときは大合唱で”と言って始まった「Make a Wish」は、静かな中でこの曲を歌い上げる細美のや生形のコーラスを聴けるのは最初で最後かなという気持ちでしみじみ聴いた。

会場がアンコールの拍手をするとわりと素早いタイミングで、メンバーが再登場し、”アンコールどうもありがとう!もうこれファイナルでいいんじゃないかな。”と満足気な表情で細美が語った。本人がそう言えるくらいやり切っているのは、本当に素晴らしいライブなんだってことだと思う。この日に立ち会えたことに感謝しながら、アンコールの「高架線」と「Cakes and Ale and Everlasting Laugh」まで、楽しませてもらった。

日に日に物事は混乱していくけれど、僕らに必要なのは、ケーキとお酒と絶えない笑顔とELLEGARDENだけなんだ!!

<ELLEGARDEN 『Lost Songs Tour 2022』>11月1日(火)@セットリスト

01. My Favorite Song
02. Supernova
03. 風の日
04. Fire Cracker
05. Space Sonic
06. No.13
07. 指輪
08. A Thousand Smiles
09. Missing
10. Mountain Top
11. Salamander
12. Pizza Man
13. Lonesome
14. Sliding Door
15. Strawberry Margarita
16. スターフィッシュ
17. The Autumn Song
18. ジターバグ
19. 虹
20. Make a Wish
en1. 高架線
en2. Cakes and Ale and Everlasting Laugh

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