THE ORAL CIGARETTES「VIVA LA ROCK2023」ライブレポート
前回THE ORAL CIGARETTESのライブを観たのは5年以上前だろうか。おそらくVIVA LA ROCKだったと思うが、もしかしたら別のフェスかもしれない。それぐらい記憶に残らなかったというのが正直なところだ。必死に、何かに食らいつくかのように演奏をしていた姿だけ記憶に残ってる。
それが今回、VIVA LA ROCK2023でのパフォーマンスを見て驚いた。自信あふれる伸び伸びとしたパフォーマンス、一瞬でオーディエンスを自分らの世界観に引き込む力が見事だった。
THE ORAL CIGARETTES「VIVA LA ROCK2023」ライブレポート
THE ORAL CIGARETTESはVIVA LA ROCK2023の初日、5月3日のVIVA! STAGEでトリを務めた。
ボーカルの山中拓也はステージに登場するやいなや、「自由のライブ久しぶり!」と顔を輝かせた。それに応えるようにオーディエンスは声を上げ、一曲目の”Red Criminal”が始まった瞬間から会場の熱気が凄まじい。鋭いギターにノイズのようなシンセサイザーやコーラスが加わって、それが刺激となって高揚感を一気に高めてくる。まさに一曲目に持ってこいの曲というわけだ。
熱気を維持したまま2曲目、3曲目とどんどん進んでいく。山中は曲によってはギターを置いてハンドマイクのみでパフォーマンスを行い、ギターボーカルとは思えないほどステージを広く使う。
特に印象的だったのは”カンタンナコト”だ。同じVIVA! STAGEで一つ前の出番だったSKY-HIをステージに呼び込み、二人の掛け合いで曲が展開していく様子は面白かった。
この日の山中の衣装は全身を白色で固め、それに反してSKY-HIは全身黒色の衣装と、対照的な見た目。そんな二人が背中を合わせて歌う様子は漫画の主人公とライバルの共闘シーンかのようで、二人の淀みない掛け合いがより人間っぽくない雰囲気を増幅させ、その完璧なパフォーマンスに目が離せなかったほどだ。
その後も、オーディエンスが腕を上下に振って一体感を生じさせる”BUG”や、鋭いギターフレーズが印象的な“Tonight the silence kills me with your fire”と、アッパーな曲を次々と投下する。フロアではコロナ禍以前のような混沌とした光景が広がっていた。
この日山中は、制限が解除されたライブの喜びを繰り返し語っていた。「これまで俺たちバンドマンは、ダイブやモッシュが解禁されるこの日を目指してやってきた」と。
これまでのフラストレーションを発散させるかのようなパフォーマンスだったが、オーディエンスも同じ気持ちだったのだろう。終始会場の熱は冷めなかった。
最後は”LOVE”でピースフルな空気を作り出し、制限が解除されたこれからのロックフェス、ライブシーンの希望を願うような締めくくりだった。
キャッチーなメロディとノリやすい曲、全員で行う一体感のあるフリ、初見だとしてもとっつきやすさがあり、このバンドが若い世代から支持を集めているのも頷ける。何より自信みなぎる伸び伸びとしたパフォーマンスが魅力的だ。
前回の印象から、期待値が高くない状態でライブを観ていたが、この数年で積み重ねた経験値やそれによるバンドの変化を感じたライブだった。色眼鏡をかけずにいろんなバンドのライブを観ようと、当たり前のことだが、改めてそのことに気付かせてくれた。