Homecomings『New Neighbors』レビュー|優しさと温かさが詰まったアルバム

考え事をしていて、眠れない夜がたまにある。そんな時には大抵、音楽を聴きたくなる。

周囲が静けさに満ちているからだろうか。それとも、暗闇で視覚が遮断されているからだろうか。
おそらくどちらもあると思うが、同じ曲を聴いていても、昼間に聴くよりずっと近くで音が鳴っているように感じる。

音楽と自分が一体化するような感覚が心地よくて、眠ろうとして聴いていたのに、なんだかもう眠らなくてもいいんじゃないかとさえ思えてしまう。

眠れない夜をともに越えて

Homecomingsのメジャー2ndアルバム『New Neighbors』を聴いている。

リードトラックの”ラプス”(作詞:Yuki Fukutomi)は、眠れない夜のための歌だ。
TVアニメ『君は放課後インソムニア』のエンディングテーマとして書き下ろされた楽曲で、〈眠れないふたりのライツ〉という出だしからも、不眠症に悩まされる登場人物たちの心情を描いたものと思われる。

星が浮かぶ夜の闇を泳ぐような、浮遊感のあるサウンド。そこに畳野(Vo./Gt.)の透明感のある歌声が重なり、どこか遠い世界へ誘われるような感覚を覚える。

〈新しい朝まで/あと少しで届くように〉の歌詞が示すとおり、同じように「夜」を連想させるのがM2の“US / アス”(作詞:Yuki Fukutomi)だ。四つ打ちの疾走感あふれる楽曲で、ダンスミュージックのようなアプローチが新しい。

“US / アス”というタイトルは、本アルバムがリリースされる前に開催されていたツアータイトルと同名であり、今のHomecomingsにとって重要なキーワードになっていることが窺える。

〈これは私たちのうた〉〈ひとりでもふたりでもないよ〉と歌われているとおり、この曲で歌われているのは「私」と「あなた」という1対1の関係ではない。きっと、もっと広いものだ。
例えば、このアルバムを聴いているすべての人を指すような、大きな集合体のようなもの。
たとえお互い顔や名前を知らなくても、私たちは繋がりあえていると言われているようで安心感を抱く。

意図したものなのか偶然なのかは分からないが、本アルバムの収録曲の歌詞には「時間」を表すものが多い。

岸田繁(くるり)がサウンドアレンジとして参加した“光の庭と魚の夢”には〈朝〉と〈夜明け〉、“アルペジオ”には〈午後〉、“i care”には〈朝〉といったように、さまざま時間帯を切り取った楽曲が収録されている。

それぞれ描かれている情景や物語は異なるが、歌詞やサウンド面からは共通して、包まれるような優しさを感じる。タイトルの『New Neighbors』(=新しい隣人)のように、「どんな時も近くにいる」と伝えられているような温かさが、このアルバムには詰まっているのだ。

Homecomingsにとって、2023年はバンド活動10周年にあたる。彼女たちが奏でる優しさにあふれた楽曲たちは、これからも私たちの心にそっと寄り添ってくれるだろう。

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