NOISEMAKER『AXIS』レビュー
この一年、仕事や人間関係で悩みや迷いが生じた時に聴いていた一枚がある。
NOISEMAKERの『AXIS』だ。
『AXIS』は2022年2月にリリースされた5曲入りのEP。
NOISEMAKERと言えば、”NAME”や”To Live Is”、前作『H.U.E』の”Better Days”のような、聴いている人の気持ちに寄り添い、生き方や人生を肯定してくれるような楽曲がたくさんの人に支持されている。
だが『AXIS』は、ありのままの自分を肯定してくれるというよりも、「今のままでいいのか」と、自分自身を見つめ直す視点を私たちに与えてくれる。
例えば、M2“SPEAK UP”ではタイトルの通り「声を上げろ」としきりに曲の中で繰り返す。
コロナ禍になって日常やライブで声を出すことがはばかられ、いつしか自分の主張までも心の中にしまっていなかったか。不安定な日々の中で他人となるべく関わらないこと、些細な意見の衝突からも逃れてやり過ごすことを賢いことだと思っていなかったか。
自分の振舞いを思い返し、思わずハッとさせられる。
踊りたくなるリズムも間奏のギラギラしすぎないギターソロも、音に身を委ねることの楽しさを思い出させてくれ、ラストのサビに向かってこの曲への没入感が増していく展開がとても気持ちいい。
M1の“Hunter or Prey”は、映画「ALIVEHOON」の主題歌に起用され、映画館のスピーカーで流れることを想定して作ったことが想像できる、ドラマチックさが感じられる一曲だ。今までのNOISEMAKERにはなかった重厚感で、最後で一気に爆発するかのような盛り上がりにはカタルシスを感じる。
〈スタートの銃声と共に君は止まってしまった それじゃ欲しいものなんて手にすることは出来ない〉〈君はどうする？どっちを選ぶ？狩る者か 狩られる者か？〉1と、この曲でもやはり自身のあり方を再確認させられる。今の自分ではダメだと、自然と姿勢が正される曲だ。
他にも、暗い感情を吐き出しながらもそこに希望を見出す”FREEZE”や、覚悟を表明する”CROWN”、もがきながら頂点へとたどり着く自信を秘めた”APEX”など、『AXIS』というタイトル通りどの曲にも目指す場所に向かって歩みを止めない、彼らの折れない「軸」が見える。
それは、このコロナ禍で、自身が主催するフェス「KITAKAZE ROCK FES」が二度中止に追い込まれても、決して折れずに三度目の正直で開催を実現させたり、さらにバンド初のホールライブに挑戦したりと、常に挑戦を続ける姿を見せてきたNOISEMAKERだからこそ嘘偽りのないメッセージとして響く。
同封のDVDには、そのバンド初となるホールライブ「NOISEMANIA PREMIUM HALL TOUR」の映像が収められている。コロナ禍で観客の声が出せないことを逆手に取り、映像表現や視覚でのアプローチに力を入れたライブはまさに必見。
曲の世界観を表現した映像を背景に、ゴスペルやダンサーらとライブを作り上げる四人の姿はロックバンドの域を超えており、その多才さに思わず唸ってしまう。
こうも折れない姿を見せられ、新しい表現と進化を感じさせる作品に触れたのならば、自分自身前に進まざるを得ない、そう思わせてくれる。
悩んでいる暇も迷っている時間もない。『AXIS』は一歩踏み出す勇気を与えてくれる一枚だ。
★NOISEMAKER PREZENTS「KITAKAZE ROCK FES」特設サイト
1NOISEMAKER “Hunter or Prey”（作詞：AG）より歌詞を引用。
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