UVERworldの「男祭り」について一人の女子Crewが思うこと
いつかUVERworldの男祭りについてちゃんと書こうと思っていた。
だが、なかなか気持ちの整理がつかず、書くのに時間がかかってしまった。
UVERworldの日産スタジアム2daysまで2週間を切った。
そして2日目の男祭りがまだ完売していないという状況を受け、今ここで書かねば!という気持ちになりこの文章を書いている。
私は男祭りのチケットを買うことができない女子Crew(UVERworldのファンクラブ会員の愛称)だ。
何度も男祭りにモヤモヤとした気持ちを抱いてきたが、今は男祭りの成功を願っている。
UVERworldの男祭りとは
男祭りとは、2011年より行われているUVERworldの男性限定ライブだ。
初めは230人のキャパからスタートし、Zepp、日本武道館、さいたまスーパーアリーナなど、年々会場を大きくして動員数を増やしてきた。
2019年、「男祭りの呪いにとどめを刺す」という宣言のもと開催された東京ドーム公演では史上最大規模である4万5千人を動員し、男性限定ライブの日本記録を更新して男祭りは幕を閉じた。
そして2023年7月30日、一夜限りの復活として、日産スタジアムで男祭りを開催する。その動員数は7万2千人を目指している。
そもそもこの男祭りは、UVERworldのファン層が女性ばかりであったことへの疑問と、周囲からの偏見に対する反骨心から始まったものだ。性別、世代関係なく曲やメッセージを発信しているはずなのに、なぜファンは女性ばかりなのだろうというメンバーの疑問、女性ファンが多いという理由でロックフェスの主催者から出演を断られたこと、などが発端となっている。
そこから男祭りを開催して年々規模を大きくし、現在のファン層は男女比が変わらなくなるほどまでに多くの男性ファンを獲得してきた。
(※男祭りと同様に、女性限定ライブである「女祭り」も開催している)
男祭りは性差別にあたるのか
しかし、「男祭り」と、男性に焦点を当てたライブが開催されること、また、メンバーの男祭りに関する発言がメディアで取り上げられることで論争が起こることもある。
それは、
・男性ファンにこだわっているが、男性ファンがいないとロックバンドではないのか?
・男性こそが“真のファン”とでも言いたいのか?
といったものだ。
男祭りの経緯を知らない、UVERworldファン以外からのそういった声を度々SNSで目にする。
そう見えても仕方がないことだとは思う。何かしらのポップカルチャーを好む女性であれば、一度は覚えのあることだからだ。
例えば、「女性は顔ファン(所謂ワーキャー)が多い(=本当の意味で良さを分かっているのは男性だ、といった文脈)」や、「男性ファンが多いと嬉しい」といった男性による発言は、ロックバンドに限らずあらゆる場面で散見される。
もちろんそれはポップカルチャーにおいての話だけではなく、ミソジ二―(女性蔑視)や家父長制が根っこにあるホモソーシャル(同性同士の絆)的考え方は、日本社会のあらゆるところに蔓延っていて、それにうんざりしている女性も多いはずだ。
では、UVERworldの男祭りはそういった視点が含まれているのか?についてだが、彼らの目標は男性に評価されることではない。
男祭りに対するメンバーの考え方は、この記事で上手くまとめられている。
rock’in on.com|【本人の言葉で紐解く】開催直前! UVERworldはなぜ男祭りに「夢」を見るのか?
先で少し述べたように、男祭りをはじめたきっかけは「世間からの評価に対する反骨精神」だ。
不服な評価、不当な扱い、そこで感じた悔しさが原動力となり彼らを突き動かしてきた。
ロックバンドがロックミュージックをやる理由にこれほどふさわしいものもないだろう。
しかしそれは同時に、彼らにとって「呪い」でもあった。
性別にこだわることが正しくないことなど、彼ら自身がよく理解している。(男祭りの参加資格は生物学上の性別で決まる)
だからこそ、男祭りを「呪い」と称し、当初の目標であった東京ドーム公演をFINALとして幕を閉じた。
それなのになぜ、彼らは今年男祭りを行うのだろうか。
男祭りで「持たざる者が起こす奇跡を見せる」
男祭りを復活させる理由についてVo.のTAKUYA∞は、「やりたいから、おもしろいから、それだけです。」(『7ぴあ 4月号』インタビューより)と答えている。なんともシンプルだ。
この思考には、東京ドームで男祭りを終えたからこそのバンドの現状が反映されていると言える。
「呪い」にとどめを刺したからこそ、「本当の意味でやりたいものに挑戦できている」状態なのだ。
TAKUYA∞は別のインタビューで、最近の曲作りについても「自分がどっちが好きかっていうだけで選べてるし、そうやって自分達の感覚に正直にやっていくことがいい結果に繋がると信じてる。それが僕らの一番の強みなんじゃないかと思いますね。」(『MUSICA vol.194』インタビューより)と語っている。
また、2021年リリースの”One stroke for freedom”(作詞:TAKUYA∞)ではこう歌っている。
〈したい事以外はもうしない 自分にがっかりしたくない〉〈でも その生き方を貫けば 何も思ってくれなかった人たちにも愛されちゃうかもな〉
今のUVERworldの行動原理は「やりたいことをやる」という、いたってシンプルなものだということが分かる。
だがそれは、男祭りも含め、このバンドが結成してからの23年間の積み重ねを経て得られた強さでもある。
そしてもう一つ、TAKUYA∞は日産スタジアムに向けて度々想いを口にしている。
それは「持たざる者が起こす奇跡を見せる」と。
単純に日産スタジアムで行う男性限定ライブについて考えてみてほしい。
7万2千人の男性だけを集めたライブができるアーティストなんて、おそらく他にいない。
もちろん、男性ファンが多い有名なアーティストであれば実質可能ではあるが、まずやろうと踏み切れないだろう。興行としてのリスクが大きすぎるからだ。
そこに挑めるのは、動員を230人から4万5千人まで増やしてきた実力と、無謀とも呼べる目標に「やりたいからやる」という衝動で立ち向かえる強さをUVERworldが持っているからだ。
男性ファンの数が圧倒的に少なかったバンドが、10年間でその数を何十倍にも増やしてきた。そんな持たざる者が起こす奇跡をこの日産スタジアムで再度実現させる。
そして、その目標に向かう姿をファンに見せることが、この男祭りを開催する理由なのだ。
女性である私は、正直、何度も男祭りに対してモヤモヤした気持ちや悔しい想いをしてきた。
そう感じてきた最も大きな理由は、女性に生まれたがために、彼らの夢に加わることができない、といった悔しさからだ。
けれども私が、UVERworldを心の底からかっこいいと思っている理由は、無謀な夢に向かって努力を欠かさない、そんな彼らの人間性を尊敬しているからだ。だから私は男祭りの成功を祈っている。
7月30日の男祭りのチケットは、残り4,000枚を切っているそうだ。
だが、成功の指標は何もソールドアウトするかどうかではない。当日の彼らのパフォーマンスをもって決まることだ。
それでも、一人でも多くの男性に日産スタジアムの景色を見てきてもらいたいと思う。
夢に向かって熱く努力した6人の姿を、しっかりと目に焼き付けてきてほしい。
▼メンバーもオーディエンスも一段と力の入る男祭りは必見。