キタニタツヤ“青のすみか”レビュー|青春の正体は後悔を内包した過去
学生時代、青春を謳歌するかのようにキラキラしていた人が苦手だった。
そんな捻くれた性格の私でさえ、この青春を歌った“青のすみか”を聴くと10代後半から20代前半を思い返して胸がギュッとなる。
青春とは、実は後悔の塊なのかもしれない。この曲を聴いて気付かされた。
キタニタツヤ“青のすみか”レビュー
7月7日より配信されたキタニタツヤの“青のすみか”。
今作はアニメ『呪術廻戦』の「懐玉・玉折編」のオープニングテーマとして起用されている。
これまでも多くのアニメやドラマの主題歌を担当し、その都度作品の世界観を忠実に表現してきたキタニタツヤだが、この“青のすみか”も『呪術廻戦』の世界観を見事に落とし込んでいる。
原作を読んだ上で聴くと、今はもう取り戻せない友情を思い、胸が苦しくなるようだ。
楽曲自体は爽やかなギターロック。
クラップや合唱のようなコーラス、チャイムのメロディと、学校を連想させる要素がふんだんに盛り込まれている。
音階を駆け上がっていくようなメロディもキタニタツヤ節がきいている。
爽やかな楽曲の一方、歌詞で表現されているのは後悔の念だ。
〈あの日から少しずつ きみと違う僕という呪いが肥っていく〉1
ああすれば良かった、こうすれば良かった。思わずそんな自分の記憶と重なる。
「青春」という言葉で表現されるのはいつだってキラキラした世界だ。
だが実際は、若さゆえの未熟さ、幼稚な言動、ちょっとした歪で起こるすれ違い。大人になった今振り返ると、恥ずかしいことばかりだ。
見た目は爽やかないい思い出、けれどもその正体はもう取り戻すことのできない後悔を含んだ過去。
そんな青春の二面性が、この一曲で上手く表現されている。
〈今でも青が棲んでいる 今でも青は澄んでいる〉1
たとえ過去を振り返って苦しくなろうとも、それは自分の中にいる紛れもない自分自身。
『呪術廻戦』の世界に浸るためにこの曲を聴くも良し。
過去の自分を愛せるようになるためにこの曲を聴くのもまたいいだろう。
1キタニタツヤ “青のすみか”(作詞:キタニタツヤ)より歌詞を引用。
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